国基研理事・拓殖大学大学院教授 遠藤浩一
民主党の親小沢系と目される比例選出衆院議員16人が、「民主党政権交代に責任を持つ会」なるグループを結成し、衆院会派からの離脱を願ひ出た。「菅政権に正統性なし!」と威勢はいいものの、党籍はそのままで、一昨年の衆院選で掲げたマニフェスト実現に取り組むのださうな。
中山義活経済産業政務官や松原仁衆院議員らも「2009年マニフェストへの原点回帰」を要請してゐるが、それ以上の行動を起こすわけではないらしい。
離党の覚悟ない「原点回帰」派
理解できない。昨年9月の代表選で修正主義の菅直人首相が勝つたことで、マニフェスト原理主義は敗北した。マニフェストに〝原点回帰〟したいのならば、党を出て新党をつくるしかないが、そこまでの覚悟はないと見える。民主党といふバブルが弾けつつあるのに、まだそれにしがみつくのは浅ましいといふほかない。
さすがは原口一博前総務相である。某月刊誌で、「菅政権は打倒せねばならない」とぶち上げ、政権交代の原点に回帰するグループ(要するにマニフェスト原理主義=民主党A)と首相を支へる勢力(民主党B)とに分割する分党論を提唱した、と報じられた。いよいよ民主党に見切りをつけたかと思ひきや、党内で「菅退陣」の声が大きくなると、今度は「とんでもない話だ。菅さんは気の毒だ」ときた。軽薄な人である。
軽薄といへば、安易な発言の繰り返しによつて政治不信を拡大させた鳩山由紀夫前首相は「『あいつが悪い、こいつを追ひ出す』といふ安易な発想で民主党を崩してはならない」と託宣してゐる。
小沢一郎元代表への処分を強行するなら党は崩壊するとの警告なのか、オーナーとしてこのまま党を崩壊させるのは忍びないとの感情の発露なのかは分からないが、いづれにせよ、大多数の国民は「アンタが言ふな」と舌打ちしてゐるに違ひない。民主党を崩壊に導いてゐる張本人の一人が鳩山氏であることを、ご本人以外は、皆、知つてゐる。
政権固執は憲政への冒瀆
民主党は末期症状を呈してゐる。菅首相もたまりかねて「消費税をどうするのかといふ時には必ず実行前に選挙を行ふ」と、解散に言及した(2月19日)。党内の退陣論を牽制するのが狙ひと思はれるが、6月などと言はずに、直ちに解散・総選挙で信を問ふべきではないか。
なぜなら、「2009年マニフェスト」で選挙に勝つた民主党に、消費税率引き上げを提起する資格はないからである。適格性無き政権の下で財源無きバラマキ予算を成立させるのは憲政への冒瀆である。
断末魔の声を上げてゐるのは菅政権ではなく、民主党政権そのものなのである。(了)
PDFファイルはこちらから
第77回:民主党政権の断末魔――もはや解散・総選挙しかない(遠藤浩一)