公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

今週の直言

  • HOME
  • 今週の直言
  • 【第1303回】「国家インテリジェンス戦略」を策定せよ
江崎道朗

【第1303回】「国家インテリジェンス戦略」を策定せよ

江崎道朗 / 2025.10.27 (月)


国基研企画委員・麗澤大学特任教授 江崎道朗

 

 高市早苗首相は政権を発足させた10月21日、各閣僚に指示書を示した中で、木原稔官房長官には5項目の指示を出した。その第3項目が「関係大臣と協力して、政府全体のインテリジェンス司令塔機能の強化に向けた検討を行う」というものであった。首相が官房長官に対してインテリジェンス司令塔の強化に向けた検討を指示したのは、恐らく戦後初めてのことだ。

 ●国家情報局の創設で連立与党合意
 では、具体的に何を検討するのか。実は前日の20日、自民党と日本維新の会が交わした連立合意書には、12項目の政策合意の5番目に「インテリジェンス政策」が掲げられている。
 それによると、来年度の通常国会において、①「内閣情報調査室及び内閣情報官を格上げし、『国家情報局』及び『国家情報局長』を創設する。安全保障領域における政策部門及び情報部門を同列とするため、『国家情報局』及び『国家情報局長』は、『国家安全保障局』及び『国家安全保障局長』と同格とする」とされた。
 同時並行で今年から、②「インテリジェンス・スパイ防止関連法制(基本法、外国代理人登録法及びロビー活動公開法等)」の法案を検討する。
 では、この国家情報局とは何をするところなのか。日本には、外務省、防衛省、警察庁、公安調査庁などにインテリジェンス機関が存在しているが、現在は個々ばらばらに活動している。しかも特定秘密保護法制定以降、自由主義各国との「情報」のやり取りが急増し、官邸に届く情報のレベルも確実に向上しつつあると聞く。だが、そうやって入手できるようになった貴重な情報をとりまとめている内閣情報調査室の体制が脆弱なのだ。そこで、せっかく得た情報を国策に活かすためにも、日本の各インテリジェンス機関と同盟国・同志国からの情報を集約し、分析・評価する司令塔として、従来の内閣情報調査室を国家情報局へと格上げしようというわけだ。
 そして首相直属のこの司令塔の下で、③令和9年度末までに「独立した対外情報庁(仮称)」、つまり日本版のCIA(米中央情報局)を創設すると共に、④それらの活動を担う「インテリジェンス・コミュニティ横断的(省庁横断的)な情報要員(インテリジェンス・オフィサー)養成機関」を創設し、⑤その活動の法的根拠となる「インテリジェンス・スパイ防止関連法制」の法案を「速やかに」策定し成立させることを目指すという。
 
 ●必要な国民の理解と支持
 とは言え、これだけの大改革を実行するためには、何よりも国民の理解と支持が必要だ。
 実は、米国やカナダなどでは「国家インテリジェンス戦略」(National Intelligence Strategy)という文書を策定、公開し、そもそもインテリジェンス活動はどういうもので、なぜ必要なのか、国民の人権や言論の自由との関係はどうなっているのか、などについて丁寧に説明をしている。よって我が国も「国家安全保障戦略」など安保3文書の改定に合わせて「国家インテリジェス戦略」を策定したらどうだろうか。(了)