中国共産党は10月23日に閉幕した第20期中央委員会第4回全体会議(四中全会)コミュニケで、人民解放軍高官9名の党籍剥奪処分を公表した。17日に国防省から処分が公表された高官を合わせると、計10名の軍高官が党籍、軍籍を剥奪された。
10名の内、9名は軍の最高位である上将、1名は中将である。中央軍事委員会副主席で制服組ナンバー2だった何衛東、同委委員で同委政治工作部主任だった苗華、台湾侵攻を担当する東部戦区司令官だった林向陽の各上将も含まれ、文字通り軍中枢の高官が大量粛清される形となった。
●大量処分の目的
この大量処分には二つの目的があると考えられる。
一つは中国が「党規律に著しく違反し、重大な職務犯罪の疑いがあり、金額が巨額」と公表している通り、反腐敗闘争の結果であろう。処分された高官の半数は旧南京軍区第31集団軍(現東部戦区第73集団軍)での勤務経験があり、習近平国家主席(党中央総書記、中央軍事委主席)に近い福建閥と呼ばれていた。その中央との近さから汚職の温床となったと考えられるが、習氏はこれを容赦なく切り捨てることで、反腐敗闘争への揺るぎない姿勢を示したと言える。
もう一つは、軍改革に伴う不必要な高官の淘汰である。習氏が2013年に公表し、2015年から開始された軍改革では、常設の統合組織である戦区を設立、指揮系統を一本化し、将校を30%削減する等、組織のスリム化を図り、中央軍事委主席即ち習氏の意図が迅速に末端まで徹底できる組織に改編した。更に2024年からは、無人装備や宇宙・サイバー・電子戦に関する装備など新領域戦力の強化に本格的に着手している。このような統合作戦、新領域戦力への対応で習氏の期待に応えることのできない高官を見限ったとも考えられる。
●2027年の建軍百年奮闘目標
このような高官の大量処分で、軍に混乱が生じている様子は公刊資料からはうかがえない。訓練は淡々と行われており、5~6月には2個空母編隊が小笠原諸島からグアム方面へ延びる第2列島線まで進出し、空母2隻が米空母役と中国空母に分かれて行う対抗演習を実施した。空母同士による初の対抗演習であり、戦区を跨いだ大規模訓練の統制が可能なことを示している。
訓練最盛期の9~10月になっても大規模な統合着上陸訓練は未だ確認できないが、着上陸訓練自体は活発に行われている。本年は時期的に重なる9月3日に軍事パレードを実施し、これに多くの人員と予算をさいており、党による軍の統制を内外に誇示できるパレードを大規模統合演習より重視したとも考えられる。
現在、軍は2027年の「建軍百年奮闘目標」に向け、訓練と戦争準備を全面的に強化し、新領域戦力の拡大を図っている。軍内の反腐敗闘争は今後も継続していくであろうが、今回の大量処分により目標達成の障害を排除できたとすれば、来年以降、統合訓練や新領域戦力の強化は加速されるはずだ。今後の中国軍の訓練と装備の動向に大いに注目せねばならない。(了)





