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田村秀男

【第1305回】高市首相は米大統領と対中経済戦略を詰めよ

田村秀男 / 2025.10.29 (水)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男

 

 中国の習近平共産党総書記・国家主席が指揮する第20期党中央委員会第4回全体会議(4中全会、10月20~23日)が打ち出した第15次5カ年計画(2026年〜30年)は過剰投資、過剰生産を加速させ、世界経済をますます混乱させようとしている。高市早苗首相は28日のトランプ米大統領との会談で「日米同盟の新たな黄金時代に向けさらなる措置を講じる」ことで一致したが、経済面でも高まる中国の脅威に対抗する共通戦略の具体化が急がれる。

 ●続く中国の輸出の洪水
 4中全会は「新型挙国体制」を打ち出した。高性能半導体、人工知能(AI)、量子計算、バイオ、新エネルギーなど「新質(新興産業)生産力」を柱とする「強国」路線を実現し、米国による制裁の影響をかわすサプライチェーン(供給網)を構築する。柱は生産力膨張策だ。自動車生産の場合、現在年産3100万台で日米独合計の2700万台を凌駕するが、5年後には4000万台規模にする。輸出を585万台から1000万台以上を目指す。つまり輸出頼みだ。今も底が見えない不動産バブル崩壊不況の中、習政権は電気自動車(EV)、太陽光発電パネルなどに政府補助金を交付し、新規参入と生産増強を奨励してきた。その結果、過剰投資と過当競争が続き、国内では価格が下落するデフレに陥り、採算を度外視した輸出の洪水を引き起こしている。
 増産だけでは企業の粗利益を意味する付加価値の総合である国内総生産(GDP)は伸びない。若者の失業率は20%を超え、新卒者の半数以上が就職先を見つけられない。GDPの4割を占める固定資産投資を支える不動産投資は減少を続け、西側企業による直接投資も前年比2桁台の減少率が続いている。4中全会は内需拡大を目指すとしたが、財政・金融政策には言及していない。外資の流入に依存する中国特有の金融制度は、日本などのように景気に即応した緩和策をとれないのが実情だ。

 ●安倍氏に倣え
 習氏に残された選択肢は対外強硬策だ。10月9日には中国が独占的シェアを持つレアアース(希土類)の輸出規制を強化した。トランプ氏は中国に100%の追加関税を課すと反発した。トランプ氏は10月末に韓国で開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に共に参加する習氏と会談し、中国のレアアース規制の1年延期と引き換えに高関税撤回で譲歩する見通しだが、習政権の対外攻勢は止まるはずはない。高市首相は今後、故安倍晋三元首相に倣って、率先してトランプ大統領に対中経済共通戦略を提案していくべきだ。(了)