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有元隆志

【第1309回】意義深い南鳥島周辺での日米レアアース協力

有元隆志 / 2025.11.04 (火)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 有元隆志

 

 高市早苗首相は10月28日のトランプ米大統領との会談で、重要鉱物やレアアース(希土類)の安定調達に向けた枠組みをつくることで合意した。今後、閣僚級協議でレアアースの採掘や製錬、加工など日米で資金投入するプロジェクトを選定する。その中で高市首相が重視しているのが南鳥島(東京都)周辺の海底に眠るレアアースの開発だ。中国に依存しない供給網づくりは急務といえる。

 ●開発に及び腰だった日本政府
 高市首相は会談後、記者団に対し、レアアース調達に関する協力提起は自身の強い希望だったことを明らかにしたうえで、「日米共同で開発していく協力関係が確認できた」と語った。
 高市首相は就任直後に行われた首脳会談に向けた事務方との勉強会でも、自らレアアース問題を取り上げるなど、この問題を重視していた。高市首相は昨年9月の自民党総裁選を前に出版した著書『国力研究』(産経新聞出版)でも「南鳥島を一つの拠点としてレアアースの生産システムを構築することを目指している」とし、事業が成功したならば「安定した国産レアアース供給体制が実現し、資源安全保障に大きく貢献する」と意義を強調した。
 南鳥島周辺でのレアアースをめぐっては、本研究所の櫻井よしこ理事長が2012年7月17日の「今週の直言」で「濃度が1000ppmから1500ppmという、非常に高品質な泥で、濃度が400ppmの水準にとどまる中国のレアアースより数倍、良質であることも判明した」と紹介。「戦略的意味は非常に大きく、政府は国を挙げて(発見者の東大工学部の)加藤(泰浩)教授らを支援しなければならない」と政府による開発支援を求めた。ところが、櫻井氏が批判したように、日本政府は及び腰だった。

 ●空母を派遣した中国軍
 中国もその重要性を認識したようだ。中国軍は今年6月、空母「遼寧」を南鳥島周辺の海域に派遣するなど、中国の防衛ラインとされる小笠原諸島や米領グアムを結ぶ「第2列島線」を越えた活動を展開した。
 その頃、南鳥島沖ではレアアース掘削の準備に取り組む内閣府戦略的イノベーション創造プログラムのメンバーらが海底広域研究船「かいめい」に乗船して活動していた。中国軍の動きはレアアース資源獲得を進める日本側をけん制する狙いがあったとみられる。
 南鳥島周辺のレアアース開発での日米協力は、中国に対抗する意味でも重要な意味を持つ。南鳥島周辺でのレアアースの試験掘削は来年1月に始まる。計画の着実な推進のためにも、高市首相の指導力に期待したい。(了)