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田村秀男

【第1310回】サナエノミクスの核心は「対中国」にあり

田村秀男 / 2025.11.10 (月)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男

 

 高市早苗首相のメッセージはSNSで瞬く間に幅広い現役世代に浸透し、高い支持を得る。高市氏への世論の期待は懸案の各種減税の道を速やかに切り開くことばかりではない。
 高市氏の政策の核心は「対中国」にある。高市氏がトランプ米大統領との首脳会談で緊密な信頼関係の構築へ大きく踏み出せたのは、「中国の脅威への対抗」が軍事・安全保障のみならず経済の分野でも日米共通の課題であるという時代の要請に沿っているからだ。

 ●経済再生を阻む抵抗勢力
 共産党が市場経済の采配を振る独裁国家中国は、レアアース(希土類)など戦略資源や電気自動車(EV)はもとより、人工知能(AI)を始めとする最先端の新産業分野でも世界市場を制圧しかねない。それに対して米国のトランプ政権が危機感を募らせ、製造業復権に大号令をかけているというのに、石破茂前政権は無為無策に終始した。財務官僚主導の緊縮財政路線の下で国内需要停滞が長引く中、日本の企業は国内に背を向け、中国を含む海外に投資する。この「失われた30年」から脱却しない限り、日本は中国資本にのみ込まれよう。
 サナエノミクス(高市首相の経済政策)は危機管理及び戦略分野に官民一丸で投資し、経済を再生軌道に乗せることを目指す。立ちはだかるのが、財政均衡主義のドグマにとらわれた抵抗勢力だ。新聞、テレビのオールドメディアは減税や財政出動に対し、くたびれた自動応答装置のように「財源はあるのか」と問いかける。
 今や財政再建論議は無用である。1997年度の橋本龍太郎政権による基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB、政策支出と税収の収支)黒字化目標設定以来、財政赤字、政府債務の増大と、経済のゼロ成長、実質賃金縮小が続いてきた。その中にあっても、第2次安倍晋三政権末期の2020年度に行った新型コロナウィルス不況対策の大型財政出動が景気を下支えした。そして2022年度からの物価高とともに税収増が加速し始め、2026年度はPB黒字化が見通せる情勢だ。だが、PB黒字維持に固執して緊縮財政を続けるなら、内需回復は無理だ。

 ●減税が国内投資を喚起する
 高市政権は「責任ある積極財政」路線を掲げる。無分別な財政支出拡大ではなく、財政健全化も心がけるという意味だ。PB黒字化目標は廃止しないが、単年度ではなく複数年度で達成を目指すという。財政規律の目標が外されると国債の信用が失われると騒ぐ国内の経済メディアに金融市場が反応する可能性を無視できないからだ。
 要は、高市政権の減税と成長投資路線が内需を拡大し、企業の国内投資を大いに喚起できるかどうかだ。高市氏が強力なリーダーシップを発揮し続けられるかどうかがカギになる。(了)