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中川真紀

【第1311回】訓練から台湾侵攻への転換可能―中国軍機関紙

中川真紀 / 2025.11.10 (月)


国基研研究員 中川真紀

 

 中国人民解放軍機関紙「解放軍報」はこのほど、中国軍の統合訓練が深化し、訓練から直ちに戦争へ転換することが可能という記事を第1面に掲載した。台湾を威圧するとともに、中国軍人の一人ひとりにいつでも台湾に侵攻できる準備と覚悟を求めたと言える。中国の戦争準備は物理的にも精神的にも着々と進んでいる。

 ●統合演習は戦争準備
 記事は10月9日付で、「新時代の統合訓練の新局面」と題し、2020年11月の「中国人民解放軍統合作戦綱要(試行)」施行後5年を経て、現在の訓練は以下のように変化したと報道している。
 (1)訓練と戦争準備の一体化
 本年4月に東部戦区が「海峡雷霆-2025A」演習を実施した。これまでの「聯合利剣」演習から「海峡雷霆」演習を経て、演習準備はすなわち作戦準備、演習状態はすなわち作戦状態となり、統合演習は単なる訓練ではなく、戦争準備を実施し、かつその能力を強化するためのプロセスとなった。統合訓練は、訓練から戦争への転換を可能にしている。
 (2)体系的な訓練
 各戦区の統合実動演習や陸海空軍それぞれの一連の演習が年間を通して全地域にまたがり体系的に実施され、訓練しつつ戦争準備をするという新たな形式が出現した。
 (3)統合訓練における新領域戦力の活用
 大量の無人装備を一群として運用するいわゆるスウォーム化された水中・陸上・空中無人装備、電子・サイバー・宇宙等の新領域戦力を統合作戦の中に取り入れ、現代戦においていかに有効に活用するか、その運用要領を具体的に研究している。

 ●実際の訓練でも「新局面」裏付け
 実際の訓練の報道を見ても、上記で述べた「新局面」が確認できる。
 陸軍部隊が戦争準備態勢の最上級レベルである「1級戦備態勢」を命じられ任務地域まで長距離を移動し、空軍部隊では訓練開始直前に戦闘態勢を命じられ任務空域に飛行する等、訓練状態から戦争に移行する訓練が報道されている。
 新領域戦力についても、実際の訓練において無人機が多用されているのに加え、市街地戦闘訓練施設で新領域関連装備の試験や運用検証が行われ、無人装備と有人戦闘力の融合等について詳細に研究している。
 中国は今回、このような現状を軍機関紙の第1面で報道し、軍が台湾侵攻の準備を整え、訓練から奇襲的に戦争に突入できる状況を維持していることを内外に示した。(了)