中国の習近平政権は高市早苗首相の「存立危機事態」発言の撤回を求め、矢継ぎ早に対日威圧策を繰り出す。中国人渡航自粛要請、日本産水産物の輸入停止などだ。さらに日本の産業界は、ハイテク産業に不可欠なレアアース(希土類)の供給制限が一段と強化されることを恐れる。
日本が留意すべきは、習政権の経済威圧は相手を分断し、弱体化させるための情報戦「認知戦」の一環であることだ。石破茂前政権と打って変わって中国への対抗戦略を繰り出す高市政権の支持基盤を揺さぶる対日世論工作を仕掛ける。日本の新聞やテレビが過剰に反応すれば、習政権の思うつぼにはまる。冷静かつ厳密に中国側の措置による国内経済への影響を見極めるべきだ。
●渡航自粛は日本人の国内旅行で相殺できる
中国人旅行客の消費減効果については、日本の大手証券系のエコノミストが11月17日、日本の経済損失が向こう1年間で1.79兆円、国内総生産(GDP)を0.29%押し下げるとする試算を発表し、新聞やテレビがそのまま報じた。
観光庁によると、中国人旅行消費は今年1~9月の実績合計が1.64兆円で、北京の訪日規制がなければ10~12月は3600億円、年間では2兆円になる情勢だった。年間1.79兆円減というのは9月までの来日中国人による消費の増勢基調が来年も続いた場合の期待値、いわば画餅との比較に過ぎない。21日のブルームバーグ電は、中国の旅行キャンセルは今後数週間分に集中しており、来年1月の予約は安定しているとの中国旅行調査専門会社の見解を伝えている。
それでも大きく見積もって、来年は前年比で2025年の当初見込み2兆円の5割、1兆円減るとしても、年間で2.2兆円以上も増えている日本人の国内旅行消費だけで十分過ぎるほど相殺出来る。香港、台湾や東南アジア、米欧の日本人気は根強い。オーバーツーリズム最大の要因と目されていた中国人団体客が減る分、多くの観光地で中国以外の国からの客が増えることも確実だ。
●レアアースも粛々と脱中国依存を
水産物については、大半の輸出業者がすでに中国以外の海外市場を開拓済みだから、中国側の「威圧」効果は少ないはずだ。
レアアースは、習政権が4月初めに輸出許可制とした。表向きは米国高関税への対抗だが、レアアースの輸出価格つり上げも有力な動機だ。莫大な生産能力過剰を背景に輸出単価は3年間で3分の1にまで暴落していた。輸出単価は6月から上昇し始めたが、生産過剰圧力は依然として大きく、輸出量を減らすわけにいかない。日本企業はあわてず、粛々と脱中国依存策を講じればよい。(了)





