公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

冨山泰

【第1319回】日米連携で中国との情報戦を戦え

冨山泰 / 2025.12.01 (月)


国基研企画委員兼研究員 冨山泰

 

 台湾有事に米軍が介入する場合、日本の集団的自衛権行使を発動する「存立危機事態」になり得るという高市早苗首相の国会答弁をめぐり、激しい中国の情報戦が展開されている。その情報戦に日本や欧米のメディアも操られ、トランプ米大統領が高市氏に自制を求めたとの報道が拡散している。台湾問題で日米分断をもくろむ中国の戦略に、日米両国政府は連携して反撃する必要がある。

 ●「トランプ氏は首相の説明に納得した」
 木原稔官房長官は11月27日の記者会見で、25日のトランプ米大統領と高市首相の電話会談に関する米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの独自記事について、「トランプ氏から台湾の主権に関する問題で中国政府を挑発しないよう助言、との記述があるが、そのような事実はない」と説明した。しかし、否定した記述を限定したため、記事中の他の記述、例えば「トランプ氏は高市氏に、台湾についての発言のトーンを和らげるように言った」などは否定しなかったという印象を残した。
 続いてロイター通信が「トランプ氏は、中国との論争がさらにエスカレートするのを避けるよう高市氏に求めた」と後追いし、翌日の朝日新聞は「トランプ氏が(高市氏に)事態の沈静化を図る必要があるとの認識を示した」と伝えた。どちらの報道も情報源を匿名の日本政府関係者とした。
 しかし、電話会談の内容を知る立場にある日本政府高官は、国基研の櫻井よしこ理事長の取材に対して、これらの報道を全面的に否定。①トランプ氏から高市氏に説教めいた発言はなかった②高市氏が台湾有事に関する自身の立場は安倍晋三元首相と全く同じだと説明すると、トランプ氏は「分かった」と、すぐに納得した③日米は連携して日中関係に対処していくことになった④日中対立をエスカレートさせているのは日本でなく中国であることは米国も分かっている―と説明した。高市政権はこうした情報をもっと発信し、内外に真相を伝えるべきだ。
 
 ●戦後秩序の擁護者装う中国の偽善
 日米首脳電話会談前日の24日、中国の習近平国家主席はトランプ大統領との電話で、台湾の中国復帰は戦後の国際秩序の重要部分であり、第2次世界大戦の成果を戦勝国の米中は共同して守らねばならないと主張し、台湾問題で日本に対する米中の「共闘」さえ呼び掛けた。さらに、トランプ氏が台湾問題の中国にとっての重要性を理解すると表明したと公式報道で伝え、台湾問題をめぐり日米間に隙間風が吹いているかのような情報操作をした。
 こうした中国側の宣伝は、米国主導の戦後の国際秩序を覆そうとしているのが中国であることを隠蔽している。その偽善を国際社会の共通認識とするべく、高市政権は情報発信に力を入れるのがよい。同時に、唯一の同盟国である米国との意思疎通に、より留意すべきであろう。トランプ大統領も高市氏擁護をグラス駐日大使に任せきりにせず、自ら発信してほしい。(了)