公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

田村秀男

【第1321回】日銀利上げ偏重路線に疑義あり

田村秀男 / 2025.12.08 (月)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男

 

 日本銀行(植田和男総裁)は来週後半の金融政策決定会合で短期金利の基準となる政策金利を0.25%引き上げ、0.75%にする公算が大きい。狙いは円安の進行阻止だが、不可解である。利上げによる外国為替市場への影響力は乏しいのだ。

 ●乏しい円安是正効果
 植田日銀は円安が物価高を招くとして、昨年3月のマイナス金利解除以降、2度の追加利上げに踏み切ったが、市場での円売りを抑制出来たのはほんの短い期間だけである。なぜなら、日本の短期市場金利が米国よりも3%超も下回る中で、0.25%という小幅な利上げでは円を売ってドルを買う投機行動を止められないからだ。植田日銀は日米金利差を大幅に縮小させるために、追加利上げを幾度も重ねて行く姿勢を示してきたが、投機筋はさらなる利上げを見込んで円売り投機で応じる始末である。
 利上げ自体は住宅ローン金利や企業の借り入れコストなどを上昇させ、国内需要を押し下げる。利上げのたびに銀行収益はめざましく改善するが、資金需要が萎縮する国内にはカネが回らない。余った巨額の資金が肝心の国内ではなく海外への投資に向かうだろう。それでは、「失われた30年」からの脱出は見通せなくなる。
 
 ●財政政策との調和を図れ
 植田日銀はまるで要塞のような日銀本店ビルに閉じこもって利上げ論議に明け暮れる場合ではない。言うまでもなく、日銀法では日銀は金融政策運営の独立性が保証されるが、国の政策目標を共有する義務がある。日本の経済の命運は今や、高市早苗政権が掲げる「責任ある積極財政」の成否にかかっている。日銀は高市財政と金融政策の調和を図ることに本腰を入れるべきである。
 高市政権は8日、一般会計歳出は18兆円余りの大型補正予算政府案を国会に提出した。減税などによる物価高対策に加え、成長力を高め、経済安全保障を強化するための戦略的投資を拡大させるための財政出動は今補正に限らず、来年度予算へと切れ目なく続く。
 財政拡張の障害となるのが、国債金利の上昇である。国債市場の主役は国債売買シェアが30~40%にもなる海外勢であり、国債売り投機を仕掛け、国債金利上昇を引き起こす。高市財政は「責任ある」の看板通り、新規国債発行規模を前年度より小さくし、政府債務残高の国内総生産(GDP)比を抑制している。だが、投機売りを牽制できていない。
 ここで、国債相場を支えることができるのは日銀しかない。植田日銀は国債保有減額路線を見直し、機動的な国債市場介入に踏み切るべきではないか。(了)