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田村秀男

【第1327回】日銀は追加利上げで日本再生に水を差すな

田村秀男 / 2025.12.22 (月)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男

 

 日本銀行は19日の金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げ、0.75%とすることを決めた。植田和男総裁はその後の記者会見で、来年も利上げを継続する意向を表明した。日米の金利差を縮小させることにより、円安の進行に歯止めをかける狙いが込められているが、円安圧力は依然として高い。これまでも、追加利上げは円安を阻止できないどころか、さらなる円売り投機を呼び込む始末だった。日銀が今、優先すべきは所得税減税や企業の設備投資拡大をめざす高市早苗政権の経済再生戦略と足並みをそろえることだ。経済が強くならない限り、円も強くならないのだ。

 ●吹き飛ぶ「年収の壁」引き上げ効果
 高市首相は日銀利上げ決定の前日、国民民主党との間で所得税の非課税枠「年収の壁」の178万円への引き上げで合意した。国民民主の協力を得ることで政権基盤を強化できたので、大型補正予算に加え、来年度予算の国会成立を円滑にし、切れ目のない「責任ある積極財政」を実行しやすくなった。
 さらに、来年の税制改正では給付付き税額控除を野党と協議し、中低所得層向けの減税を強化する。これまでの「失われた30年」で困窮化した現役世代の手取りを増やしていかない限り、消費は拡大しないし、内需次第の企業の国内投資も活発化しない。そうみると、高市財政は極めて理にかなう。
 ところが、日銀利上げ路線はさながら「我関せず」の趣がある。例えば、政策金利引き上げは変動金利型住宅ローンに頼る現役世代を少なからず直撃する。産経新聞19日付朝刊は、0.25%幅の利上げによる利払い負担増について、29歳以下では年間1.5万円、30歳代では2.7万円になるとの、みずほリサーチ&テクノロジーズの試算を紹介している。
 年収の壁引き上げに伴う減税額については第一生命経済研究所エコノミストが試算している。年収400万円では0.8万円、500万円で2.7万円、年収600万円で3.6万円という具合である。これでは、若い勤労世代に多い中低所得層が受ける減税効果は吹き飛んでしまうか、ほとんどなくなってしまう。

 ●重視すべき高市政権との政策調整
 日銀は来年の利上げの根拠を春闘の大幅賃上げに求めているが、大企業中心の賃上げが全雇用の7割を占める中小零細企業に浸透するとは限らない。現に今年も全産業でみた実質賃金は前年を下回っている。
 他方で財政収支は、税収増で大幅な改善傾向が続いている。来年、さらなる減税のゆとりは十分ある。日銀はその効果を減じてはならない。(了)