公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

今週の直言

岩田清文

【第1328回】2027年台湾有事への警鐘

岩田清文 / 2026.01.05 (月)


国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文

 

 昨年末、米国防総省が議会に提出した中国軍に関する年次報告書は、台湾有事に対する緊迫感を一段と高める内容となっており、我が国の安全保障認識に強い警鐘を鳴らすものであった。 

 ●米の脅威認識が質的に変化
 とりわけ、中国人民解放軍の目標として、2027年までに台湾に対し「戦略的決定的勝利」を達成する能力を獲得すると明記された点は重大である。前年の報告書では、2027年は軍の近代化を加速するための能力構築の節目として位置付けられていたにすぎず、台湾侵攻への言及も間接的にとどまっていた。しかし今回の報告では、2027年に台湾侵攻で勝利を得るという具体的な作戦目標を明確に立てている。これは、中国が2027年の位置付けを、量的な能力整備の段階から質的な侵攻段階へと転換させたことを意味する。
 報告書の分量は100ページと、前年に比べ約半分に簡潔化された。一方で、中国軍の演習や実行動に関する記述は増加している。これは、中国軍の演習が誇示目的の域を超え、実戦的な段階に移行しているとの、米側の強い警戒感の表れといえよう。
 台湾国防白書も昨年10月に同様の警告を発しており、中国自身も人民解放軍機関紙・解放軍報(同月6日付)において、演習から即座に戦争状態へ移行する能力を強調している。こうした能力が強化されるほど、習近平国家主席にとって、台湾侵攻を決断する際の心理的、軍事的ハードルは低下する。

 ●小型核と南シナ海封鎖能力も深刻
 この関連で日本が特に注視すべきは、核戦力と南シナ海の問題である。報告書は、10キロトン未満の小型核兵器の開発が進んでいる可能性を指摘している。小型核は核使用の敷居を下げ、台湾有事における核使用を現実の選択肢としかねない。
 昨年末、「日本は核兵器を保有すべきだ」との首相官邸幹部のオフレコ発言を巡って、国内の一部に核議論を封止しようとする動きも見られた。しかし、核抑止のあり方を正面から議論することは、もはや避けて通れない課題である。
 さらに、南シナ海の軍事基地化の進展も指摘されている。同海域は事実上、中国の管制下にあるとみるべきだ。我が国の貿易量の約4割、原油輸入の約8割が通過する重要な海上交通路(シーレーン)が、有事の際に遮断される事態は想定外とは言えない。日本としては、台湾有事において南シナ海が通航不能となる事態を前提に、国家戦略を再構築すべき段階に来ている。
 昨年11月の存立危機事態をめぐる国会論戦では、台湾有事に対する危機認識を欠いた野党側の姿勢が露呈した。しかし、中国が「決定的勝利」を目標に掲げる2027年は、すでに1年後に迫っている。
 今回の報告書は、単なる分析資料ではなく、警告書として受け止めるべきである。現実から目を背ける野党の不作為は禍根を残しかねない。(了)