昨年末、中国が台湾を包囲する区域で軍事演習を行ったのに対し、トランプ米大統領は「何も心配していない」と発言、中国の習近平国家主席と「素晴らしい関係を築いている」と述べ、台湾への軍事侵攻についても「彼がやるとは思わない」と主張した。
中国は台湾侵攻時における米国の出方を試しているのに、トランプ大統領のこのような宥和発言で「米国くみし易し」と台湾侵攻を決断するかもしれない。1938年のミュンヘン会談で、チェコのズデーテン地方の割譲を要求したドイツのヒトラーに対し、英仏両国首脳がこれ以上の領土要求を行わないことを条件にヒトラーの要求を全面的にのみ、これが第2次世界大戦勃発の要因の一つとなったこととの類似性を意識せざるを得ない。
●対中認識の甘い米政権
第2次トランプ政権が昨年12月に公表した国家安全保障戦略は、第1次政権のそれと比較して、明らかに対中戦略の厳しさがトーンダウンしている。続いて米国防総省が公表した中国の軍事力に関する年次報告書は、内容的には極めて妥当であったが、前文にはトランプ大統領に忖度して「トランプ大統領のリーダーシップの下、米中関係は長年見られなかったほど強固なものになっている」という記述があり、違和感を覚えた。
前文は、この進展をさらに強固にする取り組みの一環として、国防総省が戦略的安定と衝突回避・緊張緩和に焦点を当てた中国との広範な軍対軍交流を進めると述べている。しかし、軍対軍交流は今に始まったことではなくバイデン大統領時代から一貫して行われている。また筆者自身も元幹部自衛官として関わってきた人民解放軍との軍対軍交流に、多くを期待できないことは明白だ。理由は、こちらが信頼醸成を目的にしても、先方は情報戦を優位に戦おうという意図で接してきており、権威主義国家の軍と交流を重ねても相手に利用されるだけだからである。
冷徹に中国の能力と意図に着目しなければならないが、実際には中国の軍事的能力は留まることを知らずに強化され、習主席は台湾統一の意図を全く放棄していないのだ。
●重要な4月の首脳会談
1950年の朝鮮戦争で北朝鮮が韓国侵略に踏み切ったのは、当時のアチソン米国務長官が韓国を米国の防衛ラインから外し、それを北朝鮮が米国に韓国防衛の意思なしと誤認したことが主因であった。米国はその過ちを二度と繰り返すべきではない。
バイデン前大統領は、中国が台湾に侵攻した場合の対応を質問され、米国の軍事力行使を明言または示唆する発言を5回行った。トランプ大統領は、同様の質問に対し、対中関税を200%に引き上げるような発言はあっても、軍事力を行使すると明言していない。中国は米国指導者の発言を注視している。米国の意図を誤認させないような明確な発言が4月の米中首脳会談では求められる。(了)





