公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

櫻井よしこ

【第1330回】「力の時代」に抗する日本の国柄

櫻井よしこ / 2026.01.05 (月)


国基研理事長 櫻井よしこ

 

 昭和改元から満100年の今年、国際社会は乱気流の真っ只中でせめぎ合う。年初のトランプ米大統領によるベネズエラのマドゥロ大統領拘束は、プーチン露大統領によるウクライナ侵略や習近平中国国家主席による台湾への軍事的威嚇と同様、平和を脅かす行動として国連憲章や国際法の精神に反する。
 その点を踏まえた上で、私たちは、現在の国際社会にかつてのように国際法を当てはめることはもはや地政学的に不可能であること、大国は明らかに力によって目的を達成する時代に入っていることを認識しなければならない。その事実に基づいて、わが国最大の脅威、中国共産党への抑止力を高める現実路線を取るときだ。

 ●誇るべき「協調と包摂」の精神
 まず重要なのが「国家安全保障戦略」を公表したトランプ政権との緊密な連携である。米国は安保戦略で南北アメリカ大陸を軸として西半球を自国の勢力圏として確立し、他国(中国)の影響力を排除するとした。ベネズエラ攻撃の理由を米国は麻薬とテロに求めるが、マドゥロ大統領拘束が同国石油の8割を輸入する中国の影響力排除につながるのは間違いないだろう。
 米国の安保戦略は、中国を第2列島線(小笠原諸島~グアム)まで進出させない拠点としての台湾を重視する。これこそわが国にとって歓迎すべき方向性である。日本と台湾の運命は重なる。米国、フィリピン、韓国などとの協力で、第1列島線(日本~台湾~フィリピン)の防御力を強化するため、わが国には異次元の国防努力を重ねる責任がある。
 その上で誇りをもって自覚したい。世界を動かす米中露の3か国の前で、わが国の国柄、それを支える価値観が、人類のより良い在り方に必ず貢献することを。そのためにこれらの国々とは一味も二味も異なる日本の道を示すのだ。
 安倍政治の継承を謳う高市早苗首相は安倍晋三元首相の「自由で開かれたインド太平洋」構想、環太平洋経済連携協定(TPP)が如何に開かれた仕組みであり、各国にどれ程広く深い共感を呼んでいるかを承知のはずだ。人々、民族、国々の声に耳を傾け、同じ価値観を共有する勢力を包摂しながら前進する。わが国の協調と包摂の精神は1400年以上前の聖徳太子の十七条の憲法から始まっているのである。こうした長い歴史を通して守り続けてきたわが国の価値観、即ち国柄を広く国際社会に国家戦略として説き、広げるときだ。

 ●中国の情報戦に勝つ
 そのことがわが国を貶める中国の情報戦を上書きすることになる。昨年11月7日の高市首相の台湾有事に関する発言以来、中国共産党はわが国を軍国主義の再来とか、侵略戦争への反省がないと言って論難し、国連を舞台にわが国の孤立を図る。
 わが国の歴史に基づいてわが国の国柄を示す物語を世界に発信するのは、単に中国との情報戦に打ち克つためではない。米国にもわが国の真価を知らしめることが、より良い同盟国への道を開くのだ。昭和改元100周年、米国建国250年の今年、わが国が最もわが国らしく輝くために、長い歴史を貫いてきた国柄を前面に立てて進むのがよい。(了)