中国国防省は1月24日、中国共産党中央の審議を経て、軍制服組トップの張又侠中央軍事委員会副主席と劉振立統合参謀部参謀長を、重大な規律・法律違反の疑いで立件し、審査・調査することが決まったと発表した。
翌日、軍の機関紙である解放軍報は社説で立件の理由について、「党中央と中央軍事委の信頼と信託を裏切り、中央軍事委主席責任制を深刻に破壊した」と述べた上で、全軍将兵に対し、「党中央、中央軍事委及び習近平主席の指揮にまがうことなく従い、その重大な決定と計画を確実に実行すべきだ」と呼びかけた。
●軍に混乱見られず
「中央軍事委主席責任制の深刻な破壊」とは、習近平中央軍事委主席(国家主席)に対する越権行為や不服従を示すと思われる。また、習主席個人への忠誠を要求していることから、張、劉両氏は習主席との間に何かしらの意見対立があって粛清されたのであり、残された将兵は習主席個人に絶対服従せよ、というのが軍の見解と言ってよいであろう。
現時点では、両氏の粛清が中国軍の活動に混乱をきたしているとは公開情報からは確認できない。昨年12月から本年1月にかけて、台湾、日本に対する部隊の行動や、南シナ海等における行動、中国国内での訓練状況に大きな変化は確認できず、第一線部隊は淡々と任務を遂行しているようだ。1月27日には董軍国防相がロシアのベロウソフ国防相とオンライン会談を実施しており、中国側から今回の粛清について必要な説明があったと見られる。
●習氏決断なら直ちに台湾侵攻も
張、劉両氏の粛清を受けて、日本が注視すべきことが二つある。
一つ目は、習主席が軍を動かす決心をした場合、それを実行に移すまでの時間が短くなるということだ。中国の武装力を統一指揮する現在の中央軍事委は、2022年の発足当時、習主席を含め7名で構成されていたが、現在は習主席と張昇民副主席(上将)の2名となった。習主席が軍事的に理にかなった意見を聞くことなく、第一線の部隊に直接命令することも可能だ。もし、台湾侵攻を決心した場合、外部に漏れることなく直ちに実施され、奇襲効果を上げるであろう。
二つ目は、習主席の推進する軍改革が加速する可能性だ。軍改革は2015年に開始され、組織・法制度の改革はほぼ終了し、現在は戦争準備と新領域(無人装備、宇宙・サイバー・電子戦等)関連の改革を推進している。特に、米国に匹敵する「世界一流」の軍隊を目指すには、新領域改革は必須だ。
昨年から既に10名以上の上将が失脚しているが、反腐敗と同時に、新領域改革についてこられない古い軍人を淘汰した側面も考えられる。今回失脚した張、劉両氏は1979年の中越戦争に従軍した実戦経験を持つ数少ない軍高官だと言われてきた。昔の経験を語る将軍を切り捨て、次世代の将校に新領域改革を担わせることになれば、中国軍の戦力増強は大幅に加速する可能性がある。古い将軍を排除し、軍改革の完成を目指す習主席の強い意志を見誤るべきではない。(了)





