公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

岩田清文

【第1364回】政府が主導して核の議論を始めよ

岩田清文 / 2026.04.27 (月)


国基研企画委員・元陸上幕僚長 岩田清文

 

 国家基本問題研究所は4月24日、「日本が再び核攻撃を受けないために何が必要か」について、政府が主導して国民的議論を起こすことを求める政策提言を発表した。また、2032年以前のできるだけ早い時期に、日本が取るべき選択肢を検討の上、必要な措置を講じることも政府に求めた。この2点を今年末に改定される「国家安全保障戦略」に明記するよう提言している。(提言全文はこちら

 ●中露朝の脅威、米の不確実性
 現在、日本の安全保障環境は戦後最も厳しい局面にある。中国は核戦力を質量共に急激に増強し、2030年までに1000発超の弾頭保有を目指している。北朝鮮は戦術核の実戦使用に向けた訓練を常態化させ、ロシアは核による恫喝を繰り返している。現代の戦争はもはや通常戦力だけで完結せず、常に「核の影」の下で遂行される時代へと突入した。
 この状況において米国は、インド太平洋地域の核抑止力を補完する狙いで、2032年までに海洋発射核巡航ミサイル(SLCM-N)の作戦配備を打ち出している。これは、核ミサイルを搭載した米軍艦艇が、作戦上、日本へ寄港することを意味する。一方で、日本の安全保障の根幹である米国の拡大抑止も、これまでのように米国が必ず自動的かつ無条件に日本を守ってくれる時代ではなく、米国内の政治情勢や戦略的優先順位に左右される不確実性がさらに高まっている。
 こうした激変する環境下で、日本だけが核の議論さえもタブー化していることは、独立国家としての生存放棄に等しい。理想と現実は排他的なものではなく、現実の脅威を正しく認識し、抑止の実態を理解することこそが、「二度と核攻撃をさせない」という国家的責務を果たす唯一の道である。

 ●国民に判断材料示せ
 政府が今なすべきは、国民を核議論のタブー化から解き放つことである。具体的には、周辺国の核戦力の増強や核抑止の実態などを定期的に公表する「安全保障ブリーフ」を制度化し、国民が理性的に判断できる情報を提示していくべきである。
 その上で政府は、①日米同盟の拡大抑止機能の強化②非核三原則の見直し③日本版の核共有④日本独自の核保有―といったあらゆる選択肢を提示し、日本として「何があれば安心できるのか」を国民が議論し、主体的に選択できる素地を構築していくべきである。
 被爆国としての原点は、核議論を拒絶する免罪符ではない。むしろ、被爆の凄惨さを知る日本だからこそ、二度と惨禍を繰り返さないための責任ある抑止論を確立すべきである。政府は、2032年の米国によるSLCM-N配備を見据え、一刻も早く議論を開始するよう、国家安全保障戦略にその決意を刻むべきである。(了)