中国国家統計局は先週、今年1~3月期の国内総生産(GDP)の実質成長率が前年同期比で5%だと発表した。まやかしである。
●実態はマイナス成長?
実は、中国のGDP算出方式は恣意的な操作が容易だ。統計局は全国の地方政府から報告される1、2、3次産業別の付加価値生産すなわち事業者・企業の粗利益を集計する。地方を管轄するのは各地の党のトップ(党書記)である。出世を目指すこれら党書記は党中央が決めた成長率目標の達成に励む。今年の成長率目標は実質4.5〜5%で、2025年は5%前後だった。統計局発表の成長率は25年(年間)、26年1~3月期とも5%で、党の目標と見事に一致する。
中国方式で算出するGDPの6割以上を占める3次産業(流通、飲食・サービス、運輸業などで構成)が1~3月期に前年同期比5.6%増、25年に5.7%増だったことからすれば、GDPの5%成長に違和感はない。GDPは付加価値生産の総額だから中国方式自体は正しいが、投資、消費、純輸出など需要から算出するGDPと数字が一致するはずだ。日米欧は後者の方式をとり、GDPを正確に測ることができる。
筆者が中国の投資、消費など需要の個別データを元にGDP成長率を計算したところ、24年はゼロ%前後、25年は2%止まり、26年1~3月期はマイナスになる。ちなみに米国の市場アナリストの試算平均値も25年が0~2%と聞いた。
不動産バブル崩壊による不況が続く中、GDPの5割前後を占める固定資産投資の主柱である不動産開発投資は22年以来縮小が続き、1~3月期は前年同期比11.2%減、25年も11.2%減で、2桁台の減少となっている。好調なはずの3次産業の固定資産投資は1~3月期マイナス2%超、25年はマイナス8.4%だ。全産業でもそれぞれマイナス0.5%、マイナス5.7%である。これで5%経済成長を達成できるとは、まるでマジックではないか。
●だまされる外国メディア
GDPは国家経済運営のカギになる指標だ。党中央は別途、真の成長率を内輪だけで回覧しているとの説もあるが、たとえそうでも、党幹部の裁量に基づく限り、大きな差は出ないだろう。
習近平国家主席(党総書記)にとって何よりも重要なのは、国内外向けの宣伝効果であろう。習氏はデータの偽装を暴露した中国の著名エコノミストを拘束するなど、徹底的な情報統制を敷いている。たとえ過剰生産になろうとも、巨額の補助金を支給して新分野への増産投資を奨励し、電気自動車(EV)などの世界シェアナンバーワンを誇示する。そして、人工知能(AI)など先端分野で米国をしのぐと発信を続け、日本の経済メディアなどに報じさせ、企業の対中投資を誘導する。だまされてはいけない。(了)





