高市早苗首相は4月の自民党大会で憲法改正のスケジュールについて「時は来た」「来年の党大会までに、発議にめどがついた状態にしたい」と述べた。2月の総選挙で自民党に史上最多の議席を与えた国民の多くは、いよいよ憲法改正が実現するのかと心を躍らせたに違いない。
しかし、大きな心配が浮上している。最初の改憲発議の対象に憲法9条が含まれないかもしれないという予測が出ていることだ。自民党は安倍晋三政権時代に、①自衛隊の明記②緊急事態対応③参院の合区解消④教育の充実―の4項目の改正を進めることを決めた。ところが、最初の改正発議で①が外されるかもしれないというのだ。
●自衛隊員に「名誉」を与えよ
私は最初の憲法改正発議で9条が含まれないことは絶対にあってはならないと繰り返し主張してきた。今から10年前、参院選挙で安倍氏が率いる自民党が大勝し、衆参両院で改憲賛成派が3分の2を超えた。その時私は産経新聞の正論欄に「自衛隊を憲法に明記する発議を」と題するコラムを寄稿し、こう書いた。
〈自衛隊員は現在、南スーダンや尖閣諸島付近などで命がけで任務を遂行している。隊員は「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います」という宣誓をしている。彼らに報いる道は名誉を付与することだ。
最初の憲法改正発議において、自衛隊を憲法に明記することを避けながら、今後も命をかけて国のために働けと命令するのであれば、政治家はあまりに自衛隊員に失礼である。隊員に名誉を与えるため、自衛隊の存在を憲法に明記するための闘いから逃げてはならないと強く思っている〉
このコラム掲載から9カ月後、安倍氏が自衛隊明記案を提案した。そもそも自衛隊の憲法明記は、憲法9条2項の戦力不保持の条文をそのままにするという前提だ。9条2項がある限り、自衛隊は通常の軍隊に課されない様々な制約を受け続ける。そのことも自衛隊員に申し訳ないと心から思うが、戦後日本の平和ぼけの厚い壁を前にして、まず自衛隊を明記することから始めるべきだと私は10年前にコラムを書いたときに考えた。
●命を懸ける仕事に敬意を
この10年間、我が国を取り巻く国際環境は悪化の一途をたどった。多くの軍事専門家は9条2項とその解釈を維持したままの自衛隊明記では近い将来起こり得る有事の備えとして著しく不十分だと主張している。
しかし、10年経った今も自衛隊明記すら実現していない。最初の改憲発議で9条に触れないことはあまりにも自衛隊員に失礼だ。命を懸ける仕事をしている方にはまず名誉を与えるべきだ。あらためて声を高くして主張する。(了)




