公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

今週の直言

田村秀男

【第1380回】政府は日銀に国策との整合性を求めよ

田村秀男 / 2026.06.22 (月)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男

 

 日本銀行は16日、政策金利を0.25%引き上げ、31年ぶりの水準である1%としたばかりか、さらに利上げを重ねる構えである。需要が依然として脆弱な状況下で利上げを先行させると、景気の停滞を招きかねない。すると、高市早苗政権がめざす国内投資促進による経済再生に冷や水がかかる。日銀には国家の政策との整合性が問われる。

 ●不可解な利上げ理由
 6月1日付の本欄では、利上げはさらなる円安を誘発する恐れがあるし、原油価格高騰が招くコストプッシュ・インフレには役立たないと警告した。実際に今回の利上げ後、外国為替市場では円安圧力が高まっている。為替投機筋は次の利上げを見込んで円売りに動くからで、2024年3月以降,今回まで5度の利上げにもかかわらず円安が進行してきた。
 日銀は16日の利上げ声明の中で、原油価格高騰を受けて企業が価格転嫁を早めるので、インフレ率が物価安定目標の2%をオーバーシュートする恐れがあると説明している。しかし、18日付のゴールドマン・サックス(GS)日本法人調査部のリポートは、綿密に品目別の価格転嫁動向を分析したうえで、「日銀が示した『原油高によるインフレの上振れ』というリスクシナリオが顕在化する可能性は、現時点では低い」と断じた。拙論も、消費者物価上昇トレンドは原油相場上昇から半年から1年くらい遅れて緩やかに、長期間続くと指摘してきた。その底流には需要の弱さがある。
 実質賃金は下降傾向が続き、2025年度は21年度よりも5%も低い。実質家計消費の回復は弱々しく、25年度は13年度、18年度を下回る。需要停滞を前に、多くの企業はコスト上昇分の価格転嫁を極力抑えている。利上げによって需要が抑えられると、特に中小・零細企業は十分に値上げできず、収益が減る。すると賃上げや設備投資の原資を確保できなくなる。
 利上げで、特に住宅ローンなど負債を抱える40歳代までの現役勤労世代の金利負担がかさむ。対照的に金融機関は収益を大幅に増やせる。政策金利が適用される民間銀行の日銀当座預金は5月時点で430兆円に上り、0.25%の利上げで1兆円余りの収入増となる。

 ●経済成長を妨げるな
 日銀法では、日銀は金融政策運営上の独立性が保証されているが、同法第4条は政府の政策との整合性を義務付けている。まず利上げありきの植田和男総裁の日銀に対し、高市首相は日銀の物価見通しと現実のギャップを正すことはもとより、経済成長を妨げない金融政策を強く迫るべきだ。(了)