米・イラン戦争停戦の覚書は、米国の政治的敗北を印象づけた。比類ない軍事力でイランを圧倒したにもかかわらず、眼前の中間選挙、株式市場、油価に影響された「弱い立場からの交渉」の結果だと米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは批判した。
戦略なき軍事力行使の限界は、最も困難な状況に陥った局面でトランプ氏が長年の同盟国、例えばイスラエルのネタニヤフ首相を切り捨てるかのような発言を重ねる姿と共に、同盟国への警鐘となる。
●新秩序形成に貢献する高市構想
それでも、イスラエルも先進7カ国(G7)諸国も米国の力にあやからずには生き残れない。6月の仏エビアンにおけるG7サッミトがトランプ氏への気遣いの場となり、米国の歓心を買おうと各国が競い合う場となった現実は冷厳である。
米中のせめぎ合いの中で、米戦略家ハル・ブランズ氏らはわが国日本をはじめとする中堅国の「プランB」立案に言及する。その中でエビアン・サミットにおける高市早苗首相の提案は、ポスト・トランプ時代の新秩序形成につながる道だ。世界最大の脅威である中国の圧力を他のどの国よりも受けるわが国は、中国問題への対処に関して他国に先んじることを運命づけられてきた。その体験を踏まえて高市氏が提唱したレアアース(希土類)など重要鉱物及び石油に関するG7及び同志国間の共同備蓄構想は、新秩序形成に動くわが国の決意として高く評価された。
一連の経済分野の共同プロジェクトはハル・ブランズ氏らが言うプランBの柱の一つであり、もう一つ欠かせないのが、安全保障における多層的な国際協力の推進役をわが国が引き受けることである。
●今こそ「戦後レジーム」脱却を
必要なことは、即ち、安倍晋三元首相の掲げた「戦後レジームからの脱却」である。戦後80年間、わが国は空白の時間を過ごした。日本国憲法に象徴される戦後体制が国際社会の変化に対応できないと厳しく認識した人々は少なくなかった。国基研もまた、軍事力を強化せよ、核兵器について考えよ、憲法改正を急げと主張した。
だがその都度、どの国よりも米国が立ち塞がった。今、しかし、米国が大きく変化しているのだ。日本を含む全ての同盟国に、もはや米国は天球を支える神アトラスではない、皆、自立せよと檄を飛ばす。中国、ロシア、北朝鮮などの脅威に、米国と連携して、或いは米国を支える形で抑止力を強化せよと迫る。まさに、ポスト・トランプの時代のプランB立案を迫っているのである。わが国にとって最大の好機ではないか。
国柄を忘れ、自立を諦めた戦後のわが国は、真の意味での国家ではあり得なかった。その80年間の日本国を丸ごと変革しよう。戦後レジームの弊害を一つ一つ打ち破り、自立国家として再生を果たせるのが、今なのだ。国際秩序の崩壊を喜んで受けとめ、日本国再生へとつなげる時がきた。(了)




