公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

田久保忠衛

【第128回】宜野湾新市長の良心を問う

田久保忠衛 / 2012.02.13 (月)


国基研副理事長 田久保忠衛

せめてもの慰めだったと言っておこう。レッサー・イービル(どちらも悪いが、まだましな方)はどちらかと問われれば、沖縄県宜野湾市長に前県会議員の佐喜真淳氏(47)が選ばれた方が元市長の伊波洋一氏(60)よりもよかったと答えないわけにはいかない。

沖縄の役割に無頓着
2年前の2009年11月10日に、私は東京・有楽町の日本外国特派員協会で伊波氏の記者会見に出席していて、この人の発言を直に聴いた。安保闘争時代に「反戦」「反基地」「反安保」に没頭していた運動家がそっくりそのまま今の時代に出現しているではないか。韓国とグアム島の反基地闘争に実際に参加している運動家だと堂々と述べていた。

伊波氏に対して、かつて佐喜真氏は宜野湾市の真ん中にある普天間米海兵隊飛行場の名護市辺野古への移設を条件付きで容認していたにもかかわらず、今回の市長選では「県外移設」を唱えていた。2人とも、国際情勢全体の中で日本がいかなる位置を占め、沖縄がいかなる役割を果たしているかの認識でずれている。

国際社会の中で、アジアだけは国家主権がぶつかり合う危険が沸々と煮えたぎっている地域だ。その中で「台頭」し、軍事的にも国内総生産(GDP)でも米国に次ぐ地位を築いた中国は、国際的な常識を無視するかのように、韓国、日本、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国、インドなどと、領土、領海、領空問題で摩擦を引き起こしてきた。米オバマ政権を中心に自由主義、民主主義の価値観を共にするアジア諸国の中で、とりわけ日本が主要な役割を演じなければならない現在、「東京」の足を引っ張っているのは「那覇」ではないか。

中国は親戚?
私は42年前に1年以上那覇に住み、沖縄にこの上ない愛着を感じている。戦争末期の沖縄戦で、小禄で自決した太田実海軍中将の最後の電報「沖縄県民かく戦えり。県民に対し後世特別の御高配を賜らんことを」に感涙した。沖縄へのいかなる支援も惜しまないが、国益に沖縄が無頓着なのは困る。

復帰後の初代沖縄開発庁長官で、沖縄のために尽くした山中貞則氏は10年前に、沖縄へのあらゆる面での優遇措置に怒り、「『後世特別の御高配』も今回で終わり。これを沖縄が受け止め、沖縄がやる番だ」と述べた。

2月3日付琉球新報には、沖縄財界の重鎮で、沖縄県日中友好協会会長の国場幸一郎氏が「中国は親戚で日本は友人だ」(共同配信)と述べた談話が紹介されていた。日本国民世論はどのように動くか。佐喜真新市長の良心を問いたい。(了)

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第128回:宜野湾新市長の良心を問う(田久保忠衛)

 

【投稿】同じ穴のむじな(会員 伊佐隆好)