公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

島田洋一

【第142回】日米連携に明快な理念と約束履行が必要

島田洋一 / 2012.05.21 (月)


国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一

5月6日から13日まで、拉致議連・家族会・救う会訪米団の一員としてワシントンを訪れた。北朝鮮による米国人拉致疑惑の浮上もあり、対北・対中政策における日米保守勢力の連携に、一段の手応えを感じた。拉致議連役員の督励を受けた日本大使館の尽力で、イリアナ・ロスレーティネン下院外交委員長(共和、フロリダ州)らとの面談が次々実現し、予想以上の成果が上がった。しかし、一方で課題も明らかになった。

日本の議員は外してほしい
面会要請に対するロスレーティネン委員長の回答は驚くべきものだった。家族会・救う会とは会うが、国会議員は外してほしいというのである。同委員長は5月18日から同僚議員とともに東アジアを歴訪するが、台湾、韓国を回り、日本には寄らずに帰国する。この「議員外し」と「日本外し」は同根で、普天間問題はじめ何も決められず、約束を守れない日本政治に対する不快感表明であろう。

ちなみに、私は3月の訪米時にこの外遊計画を関係者から聞き、日本の外務当局に伝えたが、暫くして「台湾にだけ行くそうですよ」と呑気な答えが返ってきたのみだった。政官挙げて、米側の厳しい対日姿勢に敢えて目をふさぐきらいがあるのではないか。

価値観外交の徹底を
今回、計画段階から訪米団の中心となったのは拉致議連幹事長の古屋圭司衆院議員(自民)だった。日本ウイグル国会議員連盟会長として先の東京でのウイグル世界会議受け入れに奔走したことといい、価値観外交の担い手として同議員の活躍には目を見張るものがある。ところが、古屋氏には特に会えないというのがロスレーティネン側の対応なのだ。理由は、古屋氏が日本・キューバ友好議員連盟の会長を務めていることにある。

ロスレーティネン氏はキューバ難民の家庭に育ち、カストロ全体主義政権に極めて厳しい態度を取る。氏に限らず、共和党大統領候補になることが事実上決まったミット・ロムニー陣営の副大統領候補の一人で、若手のマーコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)もキューバ難民の家系で、総じて米保守派に北朝鮮とキューバを分けて考える発想はない。

古屋氏はブログに「世界で純粋な共産主義をとる国は、北朝鮮とキューバのみとなったにもかかわらず、北朝鮮のように情報開示も全く行なわない国と違って(キューバには情報の自由があり)、その中でも何十年にもわたりカストロ首相が国家元首として君臨し多くの国民から支持されている」と記している。

これは、事務所の入り口に「キューバ:ジャーナリストにとって世界最大の牢獄」と書かれたポスターを掲げるロスレーティネン氏にとって分かりにくい発想だろう。日本の保守政界のエースと言える古屋氏が米保守政界の現在及び将来の担い手らと面会すらできないという状況は不幸であり、その解消は急務だと思う。(了)

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第142回:日米連携に明快な理念と約束履行が必要(島田洋一)