公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

川村純彦

【第154回】尖閣防衛策に直ちに取り掛かれ

川村純彦 / 2012.08.20 (月)


川村純彦研究所代表・国基研客員研究員 川村純彦

8月17日、野田政権は、尖閣諸島の魚釣島に不法侵入した中国人14人を送検せず、簡単に本国へ送還した。この法治国家としてあるまじき愚行が、中国側に「日本くみし易し」との認識を与えたことは確実であり、今後、侵犯行為が繰り返されるとともに、事態が更にエスカレートするのは疑いない。

可能性高い中国軍の上陸
尖閣には、かつて100隻以上の中国漁船群が押し寄せた事例もあり、現行の警備態勢では、大量の漁船が一挙に侵入するような事態に対処できないことは明白である。

注意すべきは、漁船群の後ろには中国政府の漁業監視船が続き、更にその背後には中国海軍が控えていることである。

安保条約に基づいて米軍が介入するのは、日本の施政権下の領域に武力行使が行われた場合であり、漁民に紛れ込んだ工作員や民兵が潜入するような事態を武力行使と認定するには時間を要するため、当初の段階は日本が独自で対処せざるを得ないであろう。

離島に自衛隊を配備していない現状では、漁民に紛れ込んだ工作員や民兵が上陸に成功する可能性は極めて高く、上陸された後の対応が主となろう。最終的には侵略と認定され、自衛隊が上陸した中国軍の駆除に当たることとなるが、現状のままでは多大の労力と犠牲を覚悟しなければならない。

日米軍の共同パトロール
ではどうすれば尖閣を守り抜き、最悪の事態を抑止できるのか? 答えは以下の施策を早急に実施することである。

まず、防衛政策において、「離島への防備兵力の配備と島しょ基地の整備」と、機動性を重視した「動的防衛力の強化」及び「自衛隊に能力を十分に発揮させるための権限の付与」が必要である。

「領域警備法の制定」も不可欠である。意図的に我が国の主権を侵害する行為は、単なる犯罪ではなく侵略行為と捉えるべきであり、我が国の主権に対する侵害を目的とする意図的な不法入国・上陸に対しては、密猟や密輸などの違法行為よりも厳しい罰則を定めた新しい法律を制定する必要がある。

中国の強引な拡張政策を牽制し、地域の平和と安定を維持するためには日米同盟の強化が不可欠であり、日米の共同作戦をより緊密、かつ効率的に遂行するには「集団的自衛権に関する憲法解釈の変更」が必要である。

具体的な協力策として、「東シナ海・南シナ海の共同哨戒の実施」「日米共同島嶼防衛訓練の推進」「垂直離着陸輸送機オスプレイの配備促進を含む米軍の前方展開支援」が最も有効であろう。

尖閣問題に関して中国の妥協は絶対にあり得ない。我々は覚悟を新たに、直ちにこれらに取り組まなければならない。(了)

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第154回:尖閣防衛策に直ちに取り掛かれ(川村純彦)