9月29日は日中国交正常化50周年の記念日にあたる。50周年を祝って、日中首脳がオンラインなどで会談する可能性が取り沙汰されているが、この日の会談には反対する。いまはとても50周年を祝う時ではないからだ。
中国は8月4日、日本の排他的経済水域(EEZ)内に初めて弾道ミサイルを5発撃ち込んだ。日本側は強く抗議したが中国から謝罪はない。それどころか在日中国大使館報道官は8日の談話で「日本はかつて長期間台湾地区で植民地侵略を行い、台湾同胞を含む中国人民に消し去りがたい歴史上の犯罪に責任を負っており、やたらと口出しし、あれこれ言う資格が最もない」との談話を出した。
談話の中で「台湾は中国領土の不可分な一部」「中国が国家の完全統一を実現するのは大勢の赴くところ、歴史の必然」などと一方的な主張を展開したが、台湾が中国の一部であるというのは虚構であり、中国共産党が台湾を支配したことなどなかった。台湾の人々は大陸とは異質の歴史を紡いできたのである。
●習主席からの見舞い
日本を牽制する一方で、習近平中国国家主席は新型コロナウイルスに感染した岸田文雄首相に見舞いの電報を打った。習主席は岸田首相に「一日も早い回復を望む」としたうえで、国交正常化50周年に触れ、「あなたとともに、新時代の要求に符号する中日関係の構築を推進したい」と呼びかけた。
中国は新型コロナウイルスの感染拡大や電力不足の影響を受け、経済の減速懸念が出ている。香港の民主化弾圧や新疆ウイグルでの人権侵害で欧米から制裁を科されたのに加えて、台湾問題で米国と対立を深めている。中国が困った状況にある時に利用するのが日本だ。中国の民主化運動を武力で鎮圧した天安門事件後の1992年にも天皇陛下の訪中を実現し、国際的孤立からの脱却を図った。
今回も国内の厳しい状況を打開するため、50周年を利用して日中首脳会談を行い、友好ムードを盛り上げたいのだろうが、前述したように弾道ミサイルを撃ち込まれて何が50周年記念日だと言いたい。
●G20で会談を
首脳会談を行うのならば、11月にインドネシアのバリ島で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議に習主席も出席するというので、その場で初の対面による会談を目指せばいい。
安倍晋三元首相は生前、「どんな状況になろうとも(日中の)首脳間の交流を断ってはならない」(2020年10月12日の産経新聞インタビュー)と常に首脳会談を模索してきた。独裁体制の下で、中国の政策の決定権を持つのは習主席以外にいないからだ。
繰り返し言う。国交正常化50周年を祝う形の首脳会談は有害である。(了)