公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

冨山泰

【第999回】中国の不当なビザ発給停止

冨山泰 / 2023.01.16 (月)


国基研企画委員兼研究員 冨山泰

 

 中国発の新型コロナウイルス拡散の脅威が再び高まる中で、日本の水際対策強化に対する中国の報復措置は、二重の意味で不当である。第一に、中国の日本人へのビザ(査証)新規発給停止は、日本が中国からの入国者に入国時検査と陰性証明書提示を義務付けたことに対するもので、著しくバランスを欠く。第二に、中国の報復措置の対象は日本と韓国だけで、同様の水際対策を取る欧米諸国には何の措置も講じていない。日本は今回の中国の行動を機に、対中関係における相互主義を強め、より健全な二国間関係の構築を目指すべきだ。

 ●コロナ水際対策に過剰反応
 「ゼロコロナ」政策の放棄により中国で感染者が爆発的に増大したのを受けて、国民の健康と生命の安全に責任を持つ各国政府が新たなウイルス拡散を警戒するのは当然である。
 現に韓国では1月4日、ソウル近郊の仁川空港に中国から到着した入国者の31.5%がPCR検査で陽性と判明した。イタリアのミラノのマルペンサ空港では、昨年12月26日に北京と上海から到着した入国者の53%に陽性反応が出た。日本では、中国からの渡航者の入国時検査による陽性率が、昨年12月30日~1月5日は8.3%、1月6~12日は3.4%だった。
 3年前、500万人とも見られる中国人観光客が海外に散らばり、国際社会に新型コロナウイルスを拡散させた悪夢を想起させる。各国は急ぎ以下のような措置を施した。
 日本は12月30日以降、中国からの入国者(中国人に限らない)に入国時検査を実施し、1月8日からは、出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書の提出も義務付けた。
 韓国は1月2日から中国人への観光ビザ発給を停止し、到着後のPCR検査を実施。5日からは陰性証明書提示を義務付けた。
 欧州でも、英国が陰性証明書の提示を義務付け、フランスは陰性証明書に加えて感染症状のないことの宣言書の提出を求めている。イタリア、スペイン、ドイツも多少の違いはあるが同様の措置を決定した。
 米国も1月5日以降、中国からの入国者に陰性証明書の提示を義務付けている。
 13日の日米首脳会談を受けた共同声明では、新型コロナウイルスの感染拡大に関し、「十分かつ透明性の高い」疫学的データの公表を中国に要求した。

 ●欠けている相互主義
 こうした中、日韓両国に対する全般的なビザ発給停止について、中国外務省報道官は11日、「中国に対する差別的措置の実態に基づいて対等な反応をしている」と強弁した。日本政府は年来の定型文で「極めて遺憾」と抗議したが、これでは不十分だ。
 日中関係を歪める一方的措置は相互主義の欠如から生ずる。国民を守り、対等な日中関係を構築するために、今回の件に関して日本政府は中国人へのビザ発給を停止するのがよい。その上で、立法府は強い意志で相互主義を実現すべきだ。国民の多くが懸念する中国資本による日本国土の買い占めをはじめ、重要な問題について相互主義に基づく解決法を探るときだ。(了)