公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

髙池勝彦

【第141回】報道機関の使命忘れた中日新聞

髙池勝彦 / 2012.05.14 (月)


国基研副理事長・弁護士 髙池勝彦

一旦同意した意見広告
中日新聞は、「河村発言を支持し『南京』の真実を究明する国民運動」(略称「南京の真実国民運動」、代表渡部昇一上智大学名誉教授)との間で、一旦同意した意見広告の掲載を、社論に合はないから拒否すると通告したといふ。

多様な意見の存在を広く知らせることが民主主義社会存立の不可欠の条件であるから、法令や公序良俗に反しない限り、報道機関としては、特定の見解であつたとしても知らせるべきであるが、今回の意見広告は、南京事件について特定の見解を述べたものではなく、自由な議論の呼びかけである。それなのに、同意した契約を一方的に破棄した中日新聞の行為は、通常の商行為においても認められないばかりか、我が国のやうな民主主義社会における報道機関の行為として許されるものではない。

河村名古屋市長の発言
発端は、河村たかし名古屋市長の発言である。河村市長は2月20日、名古屋市役所を表敬訪問した中国江蘇省南京市政府の代表団に対して、「通常の戦闘行為はあったが、いわゆる南京事件はなかったのではないか」「互いに言うべきことを言って仲良くしていきたい」という趣旨の発言をした。これに対し、南京市は名古屋市との姉妹都市交流を一時中断し、中国共産党の機関紙人民日報は「必ず代償を払うことになる」と述べるなど、同市長を恫喝した。藤村修官房長官も「非戦闘員の殺害、略奪行為(があったこと)は否定できない」と述べ、国内の新聞にも同市長を非難するものが少なくない。

突然の掲載拒否
河村市長の発言は極めて穏当妥当なもので、これを中国などが居丈高に非難したことに対して、有識者、ジャーナリストなどが反発し、「南京の真実国民運動」が結成された。同会では、活動の一環として、河村市長の地元の中日新聞に意見広告を掲載することを計画し、3月下旬から中日新聞と交渉した。紙面の大きさや内容についてやり取りがあつたが、最終的に4月19日、中日新聞も同意し、賛同する国会議員58名の名前と「自由な議論で『南京』の真実究明を」といつた趣旨の文章から成るゲラもできた。この段階で広告掲載についての契約が成立したのである。

ところが5月2日になつて突然、中日新聞は掲載拒否の通告をした。同会では、5月15日、広告掲載の仮処分の申し立てを東京地方裁判所にするといふ。中日新聞の行動をどのやうに判断するかで、裁判所の民主主義理解の程度が問はれることになる。(了)

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第141回:報道機関の使命忘れた中日新聞(髙池勝彦)