公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

西岡力

【第193回】朴槿恵大統領の反日発言をどう見るか

西岡力 / 2013.05.13 (月)


国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力

 

 韓国の朴槿恵大統領が訪米した。北朝鮮の核武装を許さず、挑発に断固として対応することを強調したが、そのために必要な日米韓3カ国の連携の強化については言葉を濁し、安倍晋三政権の歴史認識を問題視する発言を執ように行った。安倍政権は韓国との信頼関係構築のため外相会談や首脳会談の早期実現を働き掛けているが、朴槿恵大統領がそれを先送りにしつつ、第3国で日本の歴史認識を攻撃するという尋常でない態度に出たのは、極めて遺憾である。

 ●韓国の反日に3つの流れ
 韓国の反日の流れは大きく分けて3つある。朴槿恵大統領はそのどの流れに乗っているのか見極めながら、日本の対応を決めなければならない。
 第1は、日本に統治されて自らの文化・伝統を否定された戦前の経験に基づく反日だ。そうした反感は時間がたつにつれて薄れていくべきものだし、実は日本時代を生きた世代は反日と親日の間を揺れるアンビバレント(二律背反的)な感情を持っている。
 第2の流れは、北朝鮮と韓国内の「従北」勢力が意図的に作り出した反日だ。親日派を処断しなかった李承晩政権は民族主義の正統性を欠くとか、日本統治時代に日本軍人として教育を受けた朴正熙将軍がクーデターで権力を取ったから慰安婦問題はきちんと処理されなかったなどと主張する。1980年代以降、急速に広まった反日で、事実がどうだったのかという観点は軽視ないし無視される。
 第3の流れは、日本統治時代を知らない大多数の韓国人が第2の反日の政治工作に乗る形で、日本は右傾化しており過去を反省していないと信じ込まされているものだ。李明博大統領は慰安婦の強制連行説を信じていたらしく、それが竹島上陸と天皇への礼儀を欠く発言の背景にあったことは間違いない。
 朴正熙大統領の娘である朴槿恵大統領は、親日派の娘として第2の反日の攻撃目標になっている。自分の父親が韓国女性を性奴隷にした日本軍隊に忠誠を誓っていたなどという、従北派の宣伝を朴槿恵大統領が信じているのか、それとも国内世論を意識して、まず強い姿勢を見せてそれから少しずつトーンを下げて日韓関係を安定させようとしているのか、現段階では分からない。

 ●保守派が「歴史」後回しを提唱
 多くの韓国人が第3の反日の流れの中から抜け出せない理由は、1980年代以降、朝日新聞に代表される日本の反日勢力が事実無根のキャンペーンを展開し、それに煽られて日本政府が事実関係をきちんと調べないで謝罪と譲歩を繰り返してきたことにある。国が違えば歴史認識と領土問題の一致はあり得ないのに、内政干渉を許してきたわが国の政府とマスコミの責任は重い。
 韓国保守派を代表する言論人趙甲済氏は、安倍政権は韓国による朝鮮半島の「自由統一」を支持しているから、歴史認識と領土問題は後回しにして、北朝鮮政策での協力を日韓関係の優先事項にすべきだという注目すべき提言をしている。朴槿恵政権が韓国の国益に合致する趙甲済提言を受け入れるか、北朝鮮の政治工作の罠にはまり日韓関係悪化の道を選ぶのか、注目し続けたい。(了)