公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

田久保忠衛

【第195回】見過ごせない米国の日本批判

田久保忠衛 / 2013.05.27 (月)


国基研副理事長 田久保忠衛

 どこの国の、いかなる立場にある人物が、日本の誰をどのような理由で批判しているのか、頭を整理しないと理解できないような混乱が日本、米国、韓国、中国の間で続いている。気になるのは米国だ。

 ●歴史認識で中韓と一致
 靖国神社参拝は日本人の心の問題であることを知っているはずなのに、米国人はどうして中国や韓国と一緒になって批判するのか。シーファー前駐日米大使がワシントンの連邦議会内で開かれたシンポジウムで、「国に命をささげた人々に敬意を表したいという気持ちは分かる」と発言したのでホッとしたが、中国と韓国は一定の魂胆があって歴史認識問題を取り上げているのであって、米国の立場は違うはずだ。今月、国家基本問題研究所が全国紙4紙に掲げた靖国参拝に関する意見広告を米国の報道関係者は読んでほしい。日本人で共鳴する人々は少なくなかった。
 米議会調査局は日米関係に関する報告書の中で、「(安倍晋三首相は)侵略の歴史を否定する修正主義者の見方を持っている」と書いたが、韓国と同じスタンスだ。朴槿恵韓国大統領は米議会演説で日本を当てこすり、ワシントン・ポストとのインタビューで「日本は過去の傷を開き、うずかせてきた。自身を省みることを望む」と述べた。これに拍手喝采する米国人は多いのだろうか。
 韓国紙中央日報の論説委員は米国の日本への原爆投下を「(神の)懲罰だ」と書いたが、この暴論が日本人にどれだけ衝撃を与えたか。米国務省スポークスマンは論評なしで通しているが、この韓国記者に同調する米国人もいるのかどうか。米国のジャーナリズムからは今の時点で反響は出ていない。韓国内には特異な雰囲気が存在し、それが一時的に高まって、知的水準が比較的高いとされるジャーナリストの筆も非常識にしてしまう。

 ●親日派はどこへ
 日本の反米感情は、戦後一貫して左翼と称される人々が抱いてきた。保守派は二つに分かれ、一方は反米、他方は親米だ。だから、日米間には価値観、安全保障観などに基づく確固とした信頼関係がある、と断定していいのか分からない。
 親米保守派といわれる日本人のほとんどが安倍首相を信頼し、安倍内閣がより強固な日米関係を築いていくだろうと期待している。その矢先の中韓と一体化した米国の日本批判を軽々に見過ごすわけにはいかない。アジアの大局を判断し、冷静な日米関係の構築を唱える米国の言論が出てこないのは不思議だ。(了)