2月20日、衆議院予算委員会に石原信雄・元官房副長官が参考人として出席し、平成5年の河野洋平官房長官談話が認めた慰安婦の「強制連行」は根拠のないことを認めた。
談話作成の事務方責任者だった石原氏は、①韓国側の要請で、強制があったことを認めるため元慰安婦の聞き取りを行った②得られた証言の裏付け調査はしなかった③日本政府の調べでは「直接、日本政府や日本軍が強制的に募集したことを裏付ける資料はなかった」④河野談話の文言について事前に韓国との「すり合わせは当然行われたと推定される」―という重大証言を行った。
●重い石原元副長官の証言
昨年10月、産経新聞が河野談話の根拠となった元慰安婦16人の聞き取り記録をスクープし、(強制連行ではなく)キーセンとして人身売買されたと当初の会見で語っていた1人がこの中に含まれていたことを確認した。また、6人が大阪、熊本、台湾など日本軍の慰安所がなかった土地で働かされたと語り、証言の信憑性に疑問が多いことをこの記事は明らかにしていた。
そうした疑問はすでに筆者らが様々な機会に指摘してきたことだが、ついに国会で事実関係について談話作成責任者の証言を聴き、慰安婦問題をあおった朝日新聞を含むマスコミにそれが大きく取り上げられたことに隔世の感を覚える。
「戦前、日本軍が韓国女性20万人を性奴隷として強制連行し、その多くを虐殺した」―。今、国際社会に広がりつつある重大な事実無根の誹謗だ。それに対して日本人が反論すると、日本政府が河野談話で強制連行を認めたではないかという非難が返ってくる。河野談話では、慰安婦の募集は主として業者が行ったが「官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった」と権力による強制連行を事実上認めていた。
しかし、筆者の調査に政府関係者は「官憲が加担したのはインドネシアでオランダ人捕虜に売春を強制したケースだ」と説明した。当時の公文書によると、朝鮮半島では官憲が業者の誘拐などを厳しく取り締まっていたことが明らかになっている。
●政府に国の名誉を守る使命
石原氏は「当方の資料として、直接、日本政府・日本軍が強制的に募集したということを裏付ける資料はなかったが、彼女たちの証言から、募集業者の中にその種のものがあったことは否定できない、募集業者に官憲が関わったことは否定できないということで、談話のような表現に落ち着いた」と証言した。
しかし、裏付け調査なしの聞き取りは歴史的事実を確定する根拠になり得ない。政府は早急に慰安婦聞き取り内容を含む河野談話作成プロセスの全面検討を行うべきだ。
安倍晋三首相は、官房長官であった河野氏の談話の検討は菅義偉官房長官が行うと述べてきた。しかし、菅長官は一時取りざたされた有識者の意見聴取さえ始めていない。日本国の名誉を守る使命が政府にはある。新たな官房長官談話を出すことを前提とした調査作業を速やかに開始すべきだ。(了)