政治、軍事、経済など諸々の要素が絡む国際情勢の分析は、短期、中期、長期の時間的要素も入り込むので、難しい。中国の習近平国家主席が国家元首として北朝鮮よりも先に7月3日に韓国を訪問した。米中両国は9、10の両日、北京で閣僚級の戦略・経済対話を行った。時を同じくして、安倍晋三首相はニュージーランド、オーストラリア、パプアニューギニアを訪れた。アジアをめぐる国際秩序をどう解き明かしたらいいか。
●米中対話は物別れ
問題を整理するために、視点をワシントンに置いてみよう。日本の新聞報道によると、第6回米中戦略・経済対話は、米中二国間でアジア太平洋の問題を取り仕切ろうという「G2」論の中国版とも言うべき「新型大国関係」について両国の見解が合わずに物別れに終わった。
当欄でこれまでも指摘した通り、米中間で「新型大国関係」の一致した定義はない。だから意見が合わないのは当然だろう。が、米中ともに、戦争という最悪の事態を避けるため、今の関係を維持しようとの気持ちに何らの変化もない。そこで、第7回対話は来年もワシントンで開かれる。
米国は巧妙だと思う。一方で中国と「新型大国関係」を維持しつつ、他方では同盟国や友好国との関係強化を推進している。5月にオバマ大統領が日本、韓国、マレーシア、フィリピンを訪れたのはその一例だ。
今回、そのバランスが中国に不利に傾いたのは、①米大手企業を標的にした中国のサイバー攻撃が続いている、②昨年11月に突如として沖縄県尖閣諸島上空を含む防空識別圏を中国が設定した、③オバマ大統領のアジア訪問後に中国はベトナムの排他的経済水域(EEZ)内に巨大な石油掘削装置を入れた―の三つが理由だ。米中関係がいずれ修復されると、同盟関係は緩む。
●安倍政権に追い風
中国は東シナ海、南シナ海で周辺諸国の抵抗に遭ったうえ、米国との関係もギクシャクし始めた。厄介者の北朝鮮を持て余している時に、戦略・戦術に無知で、反日だけを目的とした韓国の朴槿恵大統領がすり寄ってきたので習主席は訪韓したが、期待したほどの成果は上がらなかった。
その中で輝いているのは安倍首相ではないか。オーストラリアはじめ大洋州3カ国で歓迎を受けた。インドの新政権は目立って親日だし、東南アジア諸国の大半もそうだ。日本には追い風が吹いている。(了)