公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

西岡力

【第268回】日本の対韓外交に真の危機

西岡力 / 2014.10.14 (火)


国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力

 

 日本の対韓外交が重大な危機を迎えている。といっても、韓国の反日外交のため日韓首脳会談ができないなどの現状を指しているのではない。日本の対韓外交は1965年の国交正常化以来、釜山に赤旗を立てさせない、すなわち北朝鮮主導の統一により半島全体が赤化することを防ぐという戦略目標の下に展開されてきた。ところが、東アジアの冷戦を最前線で戦ってきた韓国が米韓同盟から抜けて、北朝鮮や中国の支配下に入る悪夢が浮上してきた。

 ●従北勢力におもねる朴槿恵氏
 私は、韓国の朴槿恵大統領が当選した直後から、彼女の歴史的使命は国内の従北勢力をえぐり出し、日米韓の事実上の3国同盟関係を強化して、韓国による「自由統一」を実現することだと書いてきた。昨年12月には当時の南在俊国家情報院長が部下らを集めて「2015年までに自由統一を実現する」と誓い、今年1月には朴槿恵大統領が「統一はテバク(大当たり)」だと語って、統一費用を恐れる世論に統一へのビジョンを示した。
 しかし、朴槿恵大統領は国内にはびこる従北勢力におもねり、韓国が目指す統一は北朝鮮独裁政権を倒す自由統一だと明言せず、南院長を更迭し、反日「告げ口」外交を続けている。それだけでなく、中国共産党首脳をソウルに呼んで、日本の集団的自衛権行使容認に懸念を表明した。
 また、戦時に北朝鮮軍を支援するために武装蜂起を準備せよと地下組織に命令した国会議員1人が逮捕されたが、その議員が所属する従北政党の解散手続きは遅々として進んでいない。最近の産経新聞記者の告訴をみても、朴槿恵大統領とその側近が国益を考えて行動していないことは明白だ。

 ●反日核保有国出現の悪夢
 韓国の現行憲法では、大統領は任期5年で再任は認められていない。現段階で断定的なことは言えないが。朴槿恵政権の体たらくを見ると、2017年12月に予定される次の大統領選挙で従北左派が勝つ可能性が大きくなってきた。そうなれば再び「太陽政策」により大規模な北支援が実施され、安倍晋三政権の経済制裁は効力を失うだろう。米韓同盟が弱体化し、米軍撤退につながる危険もある。
 古代以来、朝鮮半島全体を反日勢力が支配するとき日本の安全が脅かされた。いままさに、核を持つ反日勢力が半島全体を支配する悪夢が目の前に近づいている。韓国と付き合いをやめよという議論が多いが、いま日韓を隔てている問題は安全保障でなく、歴史認識だけだ。しかし、釜山に赤旗が立てば、対馬が安保の最前線になる。日本の古代律令国家は白村江の戦い(663年)に敗れた後、九州を防衛する防人制度を創設した。いまわれわれが考えるべきことは、韓国の自由民主主義勢力にモラルサポートを送りつつ、最悪の事態に備えることだ。すなわち憲法を改正して自衛隊を国軍にすることだ。残された時間は多くない。(了)