公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

櫻井よしこ

【第280回】米中と対等な関係を築く1年に

櫻井よしこ / 2015.01.05 (月)


国基研理事長 櫻井よしこ

 

 戦後70年の今年を、強い思いを抱いて日本の展望を開く1年としたい。
 早春から初夏にかけて、純国産ステルス戦闘機の実証機「心神」及び中型の民間航空機「MRJ」が日本の空を美しい姿で飛ぶはずだ。戦後7年間、航空機を造ることを禁じられ、その後もさまざまな制約を受けてきた日本の航空産業が、いまようやく羽ばたこうとしている。そのことに日本再生の一事例を見て取れる。

 ●F2開発エピソード
 米国や中国などステルス機の開発で先行している国々でさえ、日本の技術なくしては覚束ない。まさに日本のステルス技術は文字どおり、世界のトップ水準にある。このように他国に優る技術や強さを持ったとき、初めて日本は対等の立場で発言できることを1月2日、小野寺五典元防衛相が日米共同で製作した航空自衛隊の戦闘機F2を例に引いて語った。
 F2の完成への最終段階に至って、戦闘機を飛ばすのに必要なフライトソースコード(コンピューター制御のプログラム)を日本に提供するのを米国が拒否したというのである。機体が完成しても、それなしでは飛べない。やむなく日本側はフライトソースコードを独自に開発した。するとその「瞬間に」米側の日本へのソースコード売却が最初の言い値より安い値段で決定されたという。
 対等の立場に立つだけの技術や強さ、さらに心構えを持たなければ、まともな関係は築けないということだ。現在劇的に進行中の国際社会の地殻変動の中で、対等な立場に立つべきは航空産業だけではない。日本という国家そのものである。

 ●カギは日本再生
 そんな日本の思いを打ち砕きたいのか、中国は今年を、韓国を取り込んで「抗日戦争勝利と朝鮮半島の独立回復を祝う年」とし、またロシアと共同で「ドイツのファシズムと日本の軍国主義に対する戦勝記念の年」としている。歴史戦争をさらに激化させて、根拠なき歴史非難で日本叩きに注力するだろう。
 中国の攻勢は、日本にとっては天の与えたもう良薬となりつつある。慰安婦問題にしても南京事件にしても事実から懸け離れた彼らの捏造に直面して、初めて日本人が歴史に目覚め始めた。これまでは学校でも家庭でも学べず、従って知らないまま、歴史の真実など気にせずに生きてきた若い世代が、歴史に目を向け、学び始めている。
 国際社会には日本に対する誤解も広まっているが、同時に中国の主張への疑問も深まっている。日本は冷静に賢くこの歴史戦争を戦いつつ、今年を東隣りの米国とも西隣りの中国とも、対等な関係を結ぶ1年にしなければならない。そのための日本再生を進めるのだ。国基研は、日本再生の究極の道、憲法改正に向けて、具体的課題を解決していく強い力になりたい。(了)