1月6日付の米紙ニューヨーク・タイムズは「慰安婦問題に終わりなし」と題する社説を掲載した。社説は、慰安婦問題に終止符を打てないのは日本と韓国の両方に責任があるという立場を取っているが、事実と証拠に基づかない韓国側のプロパガンダをうのみにしている。
●事実と証拠を無視
社説は「何万人もの朝鮮人その他アジア人女性が性奴隷になるよう強要されたことについて日本は完全に悔い改めていない」という韓国人の主張を紹介している。しかし、この主張には二重の誤りがある。
第一に、慰安婦を何の疑いもなく「性奴隷」と決め付けていることだ。第2次世界大戦の連合国軍が発した慰安婦に関する唯一の公電(1944年10月1日ビルマ発の報告APO689)は、朝鮮人慰安婦が「ぜいたくに近い生活を送り」、借金返済を終えた一部慰安婦は帰郷できたこと、当時の一兵卒の約50倍の給料を貰っていたこと、気に入った兵士と結婚できたこと、酒に酔った兵士を拒絶できたことなどを記述し、とても性奴隷と呼べる待遇ではなかったことを立証している。ビルマにいた慰安婦がぜいたくな売春婦であって、他地域の慰安婦が性奴隷であったと主張するのは論理的でない。
第二に、慰安婦の人数を誇大に伝えている。韓国や米国などに設置された慰安婦像の碑文の多くには「20万人」という人数が書かれているが、これは慰安婦と勤労動員の「女子挺身隊」を混同した間違いから発している。信頼できる日本近代史の専門家、秦郁彦氏は、慰安婦の総数を1万〜2万人と推定、その約2割が朝鮮人だったとみており、朝鮮人慰安婦の数は2000〜4000人と見積もるのが妥当のようだ。秦氏は2015年3月の日本外国特派員協会での会見でも「日本陸軍の外征兵数が約100万人だったことから、慰安婦が20万人もいたら戦闘する暇もなかったことになる」と述べている。
●防衛相の靖国参拝に難癖
ニューヨーク・タイムズの社説はまた、「韓国は稲田朋美防衛相の靖国神社参拝について、日本が過去の軍国主義の罪を完全には認めていない証拠と論じることもできる」と述べている。しかし、釜山の日本総領事前の慰安婦像設置(昨年12月28日)は数カ月前から準備されていたに違いないのに対し、稲田防衛相の靖国参拝は昨年12月29日である。慰安婦像設置を正当化するための口実として、韓国側が靖国参拝を利用しているとしか思えない。
さらに同社説は、2015年12月の日韓合意で日本政府が生存する元慰安婦への支援に10億円の出資を「約束した」としか記述していない。実際には2016年8月に全額を支払っており、半数以上の元慰安婦が資金を受け取っているのに、これについては言及していない。像の設置が外国公館の威厳の侵害防止を定めたウィーン条約に違反していることも記述していない。
以上のように、ニューヨーク・タイムズの社説は、慰安婦問題で今も韓国側に肩入れする不公正な内容となっている。(了)