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太田文雄

【第428回】学術会議は中国に協力し自衛隊に協力しないのか

太田文雄 / 2017.03.21 (火)


国基研企画委員 太田文雄

 

 新聞報道によれば、日本学術会議は大学などの軍事研究を禁じた過去の方針を継承する新たな声明案をまとめたようだ。3月13日付の「今週の直言」で筆者は弾道ミサイル防衛のためにはレーザーなど指向性エネルギー兵器の研究開発が必要であることを論じたが、日本の大学で行われているレーザー関連の研究学会には多くの中国人学者が参加している。そうした学者の研究成果は中国で明らかに軍事利用されている。学術会議は中国人民解放軍に協力しながら、母国の自衛隊に協力しないことで良いのか。

 ●軍民一体の技術開発
 最近、米国で「中国の進化する軍事戦略」(China’s Evolving Military Strategy)という研究書が出版された。最終の第12章「中国の戦略的軍民融合の紹介」(An Introduction to China’s Strategic Military-Civilian Fusion)では、中国が建国以来、毛沢東、鄧小平、江沢民各氏から現在の習近平国家主席の時代に至るまで、いかに軍と民間が結び付き、科学技術を発展させることに腐心してきたかを明らかにし、「中国の指導的な民間科学者たちは軍を直接支援している」(400ページ)と明確に書いている。そして、近年「軍民融合領導小組」や「軍民融合研究中心」が設けられたことも記載されている。(411〜412ページ)

 ●学会セミナーに多数の中国人
 筆者は、日本の大学などで開催されているレーザー技術の学会のセミナーに多くの中国人学者が参加している事実を知っている。レーザー技術のほぼ9割が軍事利用されることは世界的な常識である。従って、中国人の学者は肩書が大学研究者や研究所職員であっても、研究成果は即、人民解放軍に軍事利用されることは疑いがない。レーザー技術のみならず原子力技術に関しても、日中友好という美名の下、中国に日本の国立大学技術者が協力している事実がある。
 学術会議がこうした事実に目をつぶり、防衛省への科学技術協力を「軍事研究」と称して行わないのは、自国の自衛隊への協力は拒否しても人民解放軍への協力は積極的に行っていることに他ならない。江戸時代の兵学者、山鹿素行は「兵法の奥義は己れに克つにあり」と喝破した。古来、国が亡びたのは外敵よりも国内に原因がある、すなわち、国内で反日的活動を許すことは国の安全保障を危うくする、という意味だ。日本は戦わずして既に敗北しているのである。
 学術会議は4月の総会に向けて最終案を取りまとめる模様であるが、防衛省・自衛隊への技術協力に関して再考を促したい。(了)