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太田文雄

【第427回・特別版】北朝鮮ミサイルへの防御態勢構築を急げ

太田文雄 / 2017.03.13 (月)


国基研企画委員 太田文雄

 

 北朝鮮は3月6日朝、改良型スカッドと見られる弾道ミサイル4発を日本海に撃ち込んだ。今回の弾道ミサイル発射の軍事的意味合いを考察し、今後の予測と日本が取るべき対応について述べてみたい。

 ●攻撃能力向上は明らか
 北朝鮮の地上からの弾道ミサイル同時発射は、昨年8月3日の2発、9月5日に西岸から日本の排他的経済水域に3発の弾道ミサイルを発射させたのに続き、3回目である。
 今回は昨年9月の発射に比べ、次の点で進化している。第一に、半年前の連続発射ではかなりのタイムラグがあったのに対して、今回はほぼ同時に発射している。第二に、昨年は舗装道路から発射したのに対し、今回は不整地から発射している。第三に、昨年は昼ごろ発射したのに対して、今回は早朝であった。
 第一の点は、飽和攻撃(相手の防衛能力を上回る攻撃)の精度が向上していることを意味する。第二の点は、どこからでも発射できるようになったことを示す。第三の点は、偵察衛星が探知できない夜間に燃料をミサイルに注入して奇襲攻撃が可能であることをアピールしている。
 今後予測される発射は、異なる種類、例えば改良型スカッド、ノドン、ムスダンといった異なる飛行経路の弾道ミサイルを組み合わせるか、異なる場所から発射して同一地点に落下させるといった具合に、ミサイル防衛の対応を難しくすることが考えられる。

 ●「イージス・アショア」など検討を
 異なる方向から異なる飛行経路で飽和攻撃が行われれば、現在の弾道ミサイル防衛では対応が難しい。それに対抗するためには、現在のイージス艦とパトリオット迎撃ミサイルの組み合わせに加えて、イージス・アショアと呼ばれる陸上のイージス・システムや、韓国で配備されようとしている「高高度ミサイル防衛システム」(THAAD)を追加配備するか、レールガンやレーザー兵器といったエネルギー兵器を開発する、あるいはミサイル発射源攻撃能力を保持するといった方策が考えられる。しかし、安部晋三首相は8日の参院予算委員会で「敵基地攻撃能力を持つ計画はない」と述べている。
 北朝鮮が弾道ミサイルを発射するたびに政府は「情報収集の徹底」を関係官庁に指示し、北朝鮮に「厳重な抗議を行った」との声明を出しているが、情報収集は政策策定に役立たなければ意味がないし、北朝鮮に厳重な抗議を行っても効果がないことは明らかである。
 これに対し米軍は、昨年9月の北朝鮮の弾道ミサイル連続発射と核実験の後、10月6日に地下貫徹弾や広域破壊核爆弾を搭載したステルス爆撃機B2を飛行させた。またトランプ政権は北朝鮮に対してあらゆる選択肢を検討中としている。北朝鮮を震え上がらせるような対策を取らない限り、北朝鮮のエスカレーションを防ぐ有効な手立てはないであろう。(了)