公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

太田文雄

【第431回】遅きに失する敵基地攻撃能力の検討

太田文雄 / 2017.04.03 (月)


国基研企画委員 太田文雄

 

 北朝鮮の核ミサイル開発の進行を受け、自民党は3月30日、敵基地攻撃能力の保有を検討するよう政府に提言した。提言したのは「検討」であり「保有すべし」とまでは言っていない。検討の後、保有すべきだとの結論を得るとしても、それまで数年を要し、それから開発に至るにはさらに10年以上を要するであろう。敵基地攻撃能力は探知能力と攻撃能力に大きく分けられ、その両方をゼロから開発しなければならないからである。
 しかし、北朝鮮(および中国)の核ミサイル開発はそれを上回るペースで行われている。敵基地攻撃能力の保有をこれから検討するのは、むしろ遅きに失する。

 ●探知能力確立まで10年以上
 北朝鮮は、移動式発射台から2月に固体燃料の弾道ミサイルを、3月6日早朝には複数の弾道ミサイルを夜間に燃料を注入して同時に発射した。この意味するところは、光学衛星やレーダー衛星でミサイル発射の兆候を事前に探知することは極めて難しくなってきたということである。
 従って、今後、弾道ミサイルの発射を最初に探知するのは、発射熱源を赤外線によって探知する偵察衛星になる可能性が大きいが、こうした衛星を我が国は保有していない。赤道上空約36,000キロに静止するこの衛星の寿命は約5年であるため、監視状態を保つには複数の衛星が必要となり、開発から常時監視体制が整うまでに10年以上必要とされる。
 ちなみに、我が国の光学衛星とレーダー衛星各2基、計4基の情報衛星体制が確立したのは2013年であり、北朝鮮が我が国上空に弾道ミサイルを飛行させて情報衛星の必要性が検討された1998年から15年も要している。

 ●日本の攻撃能力保有に懸念聞かれず
 敵基地攻撃に使われる兵器は航空機搭載の爆弾やミサイルもあり得るが、現実的には長射程の巡航ミサイルか、米国が現在開発中の「通常兵器による迅速なグローバル打撃」(Conventional Prompt Global Strike=CPGS)となるだろう。これも実用化までに10年以上を要する。
 1998年の北朝鮮弾道ミサイルの我が国上空通過を受けて、政府が日米間でミサイル防衛システムの共同開発に踏み切ったのが2003年であり、その共同開発の迎撃ミサイルであるSM3ブロック2Aは、ようやく本年2月28日になって実験成功に至っている。実戦配備はさらに数年後になるから、これも15年以上の年月を要することになる。ちなみに中国はCPGSの一翼を担う極超音速飛翔体(HGV)の実験にこれまで6回成功し、米国をしのいでいる。
 日本の左派勢力はもとより、保守派の中にも、「日本は盾、米国が矛」というこれまでの役割と任務の分担が崩れてしまうことを懸念し、敵基地攻撃能力の保有に反対する人がいる。しかし、筆者が接している多くの米軍将官は日本が攻撃能力を持つことに賛意を示しており、かつてのように「米国は日本の(軍国主義化を防ぐ)瓶の蓋」であると主張する者はいなくなっていることを最後に付け加えたい。(了)