9月6日、日本の公共放送・NHKは、「クローズアップ現代+」という報道番組で、教科書採択問題を取り上げた。関西の私立エリート校の一つである灘中学校が、現場の教師たちが執筆した「学び舎」刊の教科書を採択したところ、教科書を批判する同一文面のハガキが50枚も届き、不当な圧力をかけられたというものだった。だが、この報道には重大な問題点がいくつも隠されている。
●NHKの二重基準
第一に、教科書採択に対する圧力といえば、従来の自虐的な歴史教育の偏向を正す立場から書かれた『新しい歴史教科書』(扶桑社刊)の採択に対する、日教組や左翼陣営からの妨害事件があった。2001年7月、栃木県でこの教科書を採択した2市8町の教育委員会に、全国から合計2万件の抗議の電話・ファクスが洪水のように押し寄せた。教育委員長の自宅には連日深夜、採択阻止の脅迫電話がかかった。この圧力に屈服して10の自治体はすべて一度決めた採択を撤回し、別の会社の教科書に変更した。マークされた教育委員の自宅にカミソリの刃が送られた地方もあった。
しかし、NHKは現実に採択変更まで行われたこの事件を全く報道せず、参考意見を書いただけで採択の撤回を要求しているわけではない灘中の話を大きく取り上げた。常軌を逸したダブルスタンダードだ。
●新たな倒閣運動
第二に、「学び舎」の教科書の偏向ぶりは凄まじいもので、日本がいかに悪逆非道であったかというアジテーションのオンパレードだ。執筆者には共産党系教育団体の役員も入っている。この進学校のPTAが知れば、ただではすまないシロモノだ。
第三に、この歴史教科書は、学習指導要領が前提としている通史を書くという構成になっていない。教科書検定審議会歴史小委員会の委員長も「学習指導要領の枠に合わない」と認めている。この教科書は指導要領違反で、検定不合格とすべきだったが、萎縮した文科省が政治判断で合格させたもので、これは不正である。
第四に、灘中学校の問題は大阪毎日放送の7月30日の特集番組が初めに火をつけ、多くのメディアがすでに取り上げていた。そのキッカケとなったのは、灘中の和田孫博校長のエッセイだった。その中でハガキの発案者である近現代史研究家の水間政憲氏を「日本会議の講師」と書いているが、事実無根の捏造だ。バックに日本会議や安倍晋三首相がいることを匂わせることで、灘中教科書採択問題を学校法人・森友学園への国有地払い下げ問題と加計学園の獣医学部新設問題に続く安倍政権倒閣運動の第三のネタにしようとする悪質な意図があったことを暗示する事実である。(了)