公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

西岡力

【第482回】韓国保守派との対話

西岡力 / 2017.11.27 (月)


国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力

 

 「韓国人として恥ずかしい」「外交儀礼も知らないのか」「北朝鮮の核武装を阻止するため韓米日の連携が今くらい必要な時はないのに、逆をしている」。11月中旬に私と会った韓国保守派のリーダーらは、韓国の文在寅政権がトランプ米大統領訪問時に晩餐会で、「独島エビ」をメニューに加え、元慰安婦をトランプ大統領と抱擁させたことを口々に批判した。
 韓国が不法占拠する島根県・竹島の韓国側呼称「独島」の名前を付けたエビ料理のメニューは外務省の知らないところで大統領秘書室が決めた。元慰安婦の招待も秘書室主導だった。その秘書室を牛耳っているのが任鍾晳室長だ。任氏は北朝鮮を支持する過激な革命運動家出身で、現在まで転向宣言をしていない。任氏の直属の部下である秘書官は26人いるが、私の調べではそのうち10人が室長と同様、1980年代の過激な活動家出身だ。

 ●アグリー・トゥ・ディスアグリー
 私は韓国保守派と在米韓国人保守派がつくったセーブ・コリア財団主催の朴正熙大統領生誕100周年記念・米国横断シンポジウムの講師団の一員として、ロサンゼルス、ワシントン、ニューヨークを回った。同財団は、朴槿恵前大統領の弾劾裁判の弁護人だった元大韓弁護士会会長の金平祐氏が設立したもので、シンポジウムには韓国から保守派のリーダーである趙甲済氏や中央日報元主筆の文昌克氏らが参加した。文氏は朴槿恵政権時代に首相候補に指名されたが、日本の統治の肯定的側面を講演で取り上げたことをKBSテレビで批判されて、就任を辞退した経験を持つ。
 私は「日本から見た朴槿恵弾劾」「世界規模の北朝鮮による拉致」「ポスト金正恩の朝鮮半島」という三つのテーマを韓国語で講演した。講演では、①領土問題と歴史認識では国と民族が異なれば絶対に同じ考えに立てないから「アグリー・トゥ・ディスアグリー」(一致できないという点で一致する)しかない②しかし、自由、法の支配、人権、市場経済という普遍的価値を朝鮮半島全体、そして中国大陸まで拡散すべきだという点では一致できる―と主張した。趙甲済氏も、西岡さんとは慰安婦問題と独島(竹島)問題だけは意見が違うが、北朝鮮や韓国に関する見方は全く同じだと話していた。

 ●北との連邦制目指す文政権
 文在寅政権は、普遍的価値を北朝鮮地域まで拡散しようとせず、逆に韓米同盟を弱体化させて、北朝鮮の3代世襲独裁政権との連邦制統一を目指している。文在寅政権は反共自由民主主義という韓国の国是を崩そうとしている。私は講演で、近い将来、韓国の国是を守ろうとする勢力と文在寅政権の間で流血の衝突が起きるかもしれないが、私たち海外の自由民主主義勢力は、韓国の国是が守られることを強く期待していると話した。保守派リーダーらは私の話に同意した。(了)