今年夏の猛暑や、台風に伴う洪水を含め、気候や環境の異変が人間の経済活動で放出される温室効果ガスによる地球温暖化のせいではないかと、地球の将来を心配している方も多いと思う。
そこでまず、石炭、石油の燃焼により排出される二酸化炭素など温室効果ガスが依然増加しているにもかかわらず、地球全体の気温上昇は西暦2000年頃よりほとんど止まっていることを知っていいただきたい。
●最近20年間の気温上昇はわずか
温暖化対策の国際的枠組みとして2015年に締結されたパリ協定では、2100年までの気温上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑えることを目的に掲げた。科学者グループによる32個のモデルの102個の計算では、2000年から現在までの約20年間に、0.3度から1.2度ほど上昇することになっている。しかし、実際には、2000年から現在までの上昇はわずか0.1~0.2度である。スーパーコンピューターによる予測が誤っていたのであるが、この事実は報道されていないので、一般市民には知られていない。
それでは、なぜコンピューター予測が誤ったのか。それは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、20世紀後半の気温上昇は温室効果ガスによる可能性が非常に高いとしたことから始まった。スーパーコンピューター予測といっても、結局、20世紀後半の上昇をそのまま2100年まで延長したにすぎない。コンピューターによる計算の初期条件が誤っていたのである。
IPCCはなぜそんな結論を出したのか。それは自然変動を無視したからである。地球は過去から自然変動による大きな温暖化、寒冷化を繰り返している。当然、現在でも自然変動は起きている。残念ながら、現在それを修正する方法がない。筆者は著書「正しく知る地球温暖化」(誠文堂新光社、2008年)で述べたように、20世紀後半の気温上昇の6分の5は自然変動によるもので、温室効果ガスによる上昇は6分の1以下であると推定している。また、1800年からの気候変化から推定して、2000年から気温上昇は30年ほど止まると結論した。
●気象異変は起きたか
米国の学会では一部の研究者がようやく自然変動を認め、温暖化予測が修正されつつある。温暖化が起きると、気象の変化が激しくなるとされているが、例えば日本付近の台風の数は過去50年間で増えたであろうか。米国海洋大気庁(NOAA)によると、米国で竜巻の数は減ってきている。竜巻の被害は年々増加しているようだが、それは都会が広がっているからだ。過去においては、竜巻は大農場か原野を突き抜けて走っただけであったろう。
テレビの温暖化報道では氷河の末端で氷が崩れる場面が放映されるが、氷河は氷の「川」であり、末端が崩れるのは当たり前である。筆者は温室効果ガスの放出を減らすことに全く異論はない。しかし、地球温暖化問題については、学者も一般市民もあまりにも知識が少ない。コンピューターの専門家は過去の長い地球の変化に関心がない。筆者は、特に自然変動の十分な理解なしに、正確な気候予測は不可能だと思う。(了)