理事長 櫻井よしこ
新しい年が巡って来る。私たちの前に広がるこの一年は緊張あふれる年になるだろう。私たちは民主党政権下の政治的空白と政府の機能停止状態から脱して、多くの緊急事態に向けての準備を整えなければならない。最も切迫した緊急事態は、日米関係のゆらぎである。
日本に孤立の恐れ
米国に対する好悪に拘わらず、日本の生き残りを担保する当面の力は、日米安保条約の下で緊密な日米協力関係を維持することだ。そのことを理解し、現実に即した最善の外交を展開していくために、まず、明治維新以来、日本国が体験した日清・日露戦争、日英同盟の締結とその破棄、その後に続いた日米戦争についての歴史を学びたいものだ。当時の状況を俯瞰すると、日本が国際社会で孤立し、追い詰められていく様子がはっきり見えてくる。米国と英国が手を結び、中国と意を通じて、国際社会が日本を封じ込めていくなかで、その孤立の意味の決定的な深刻さに最も気付いていないのが、当時の日本人だったことも見えてくる。
いま、また、同じような構図が出来上がりつつある。米国と中国は、第二期ブッシュ政権の時から定期的に米中戦略経済対話を行い、接近を強めた。オバマ政権は、米中二国間対話の議題を経済に限定せず、同対話を大国同士の戦略対話に格上げした。米国のアジア外交は、中国を中心軸として構成され始めたのである。日本から中国への、明白なシフトである。
中国の勢力拡大を阻め
だからといって、日本になす術がないわけでは決してない。米中関係は経済的には緊密さを増し、軍事的には緊張の度合を深めていく。その中で本来、日本こそが重要な役割を果たすべきなのだ。自由、人権、民主主義、国際法の遵守などの価値観を、中国を含むアジア全体に定着させていくために、米国との協力を深め、アジア全体をより良い方向に導く牽引力となることだ。そうすることで、日本の孤立を回避し、同時に中国の全体主義勢力の拡散を止める断固たる力になれる。
そうして初めて、次に起きると思われる北朝鮮有事への対応も自ずと決まってくるだろう。つまり、日米関係を基軸にして韓国による自由統一の実現に、日本も力を貸し、北朝鮮が中国の戦略拠点になる危険性を除去するのである。
このような日本になれるように、私たちは力を尽して議論し、提言し、その実現に向けて働きたいと思う。(了)
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第19回:来年こそ日米関係深化を(櫻井よしこ)