中国への過剰な忖度はやめるべきだ。中国の香港への統制強化を目的とした香港国家安全維持法(国安法)施行に対する自民党と公明党の対応である。主要野党が談話などでいち早く批判したのとは対照的に、与党は正式な談話を出していない。なかでも自民党は部会で習近平国家主席の国賓来日の「中止」を求める非難決議案をまとめたにもかかわらず、二階俊博幹事長が待ったをかけている。
●習氏の国賓来日「中止」を
野党各党は国安法施行を受けて、「大変危惧するところであり、はなはだ遺憾である」(立憲民主党)などと批判した。かつては中国共産党と良好な関係だった日本共産党も今回の措置を「暴挙」と位置づけ、撤回を求めた。日本共産党は中国共産党について「その行動は社会主義と無縁で、共産党の名に値しない」(志位和夫委員長)と批判を強めている。
与党は対応が遅れ、公明党では斉藤鉄夫幹事長が3日の記者会見で、「(在留邦人らが)危害を加えられることがなく、安心して活動できることが一番大事だ。今後の状況を注視したい」と述べただけだった。1972年の日中国交正常化に尽力した公明党は中国共産党との間で「絶対にノーと言わない関係」を築いてきた。本来、公明党は「人権、平和を断じて守る」政党ではなかったのか。いまのままでは、公明党が掲げてきた「人権」「平和」という「看板」を下ろしたほうがいい。
自民党では、野党に後れをとっていることに危機感を覚えた岸田文雄政調会長の指示により、外交部会と外交調査会の3日の役員会で国安法施行を強く非難したうえで、習近平主席の国賓来日の「中止」を政府に求める決議案をまとめた。ところが、親中派の二階幹事長からの「摩擦が起きないよう外務省とよく相談するように」との指示で、3日中の官邸への申し入れができなかった。
●現代の朝貢外交
外交部会のある役員は「『中止』という表現が弱まるようなことがあってはならない。中国に足元を見られるだけだ。民主主義の重みを党としてどこまで理解しているかが問われる」と二階氏の横やりに反発する。
与党が「現代の朝貢外交」のような対応をとっていると、国安法施行に「重大な懸念」を示すとの外相の共同声明を出した主要7カ国(G7)の足並みを乱すことになり、安倍政権の対中外交にも影響する。
岸田氏は二階氏の圧力に屈することなく、決議案を「中止」のままでまとめることができるか真価が問われている。外相も経験した岸田氏がここで屈するようなことがあると、「ポスト安倍」を目指す資格はない。(了)