国基研理事・拓殖大学教授 遠藤浩一
民主党の獲得議席は44。改選議席を10も減らした。政権交代から1年足らずで、事実上不信任を突き付けられたと見るべきだろう。平成15年の「民由合併」以来、比例選挙では2100万票以上を獲得してきたが、今回それを大きく割り込んだ(1845万票)。実際に政権を担当させてみて、「未知への期待」が萎えてしまったということだ。「民主党バブル」は弾けつつある。
一方、自民党候補は1人区を中心に善戦したものの、比例選挙では民主党の後塵を拝し、しかも、3年前に確保した1654万票に及ばなかった(1407万票)。自民党への支持も低下し続けているのである。1人区での善戦は比例選挙で分散した保守票が自民党候補に一本化されたことによるもので、いわば「オール保守」の勝利といえる。強力な保守政党が存在していたならば、民主党はさらに議席を減らしていたのではないか。
当面の焦点は連立組み替え
消費税増税は「論点」ではあったが、上位2党がともに税率引き上げを打ち出しているわけで、これ自体は必ずしも「争点」ではなかった。問われたのは、野放図な再分配政策(バラマキ)を提示し続ける民主党に増税を提案する適格性があるのかという点だった。この結果をもって消費税増税そのものが否定されたと解釈すべきではない。
当面の焦点は与党側においては連立の組み替え、野党側にとっては参議院議長や議院運営委員長人事ということになるだろう。連立の組み替えは政権の路線や政策の大幅修正を意味し、同時に民主党が内包する構造的矛盾の拡大を露呈することにもなりかねない。また野党間の共闘が成立し、議長や議運委員長ポストが野党側に回れば「衆参ねじれ現象」がより鮮明となり、衆議院の解散圧力が強まることも予想される。
求められる政党基盤の構築
中期的には民主党、自民党ともに政党としての自己存立基(アイデンティティ)の再確認が迫られる。民主党はこれまで「反自民」なる掛け声を求心軸にしてきたが、国防・安全保障、極度な再分配政策の是非、経済成長戦略、外国人参政権や夫婦別姓、人権救済法などについての党内での真剣な議論が求められる。放置してきた綱領の制定も避けられない。もはや「反自民」を鎹にするだけでは政権は維持できないし、政党の維持さえ困難になるのではないか。
自民党も、長期政権時代の惰性からの脱却、国家再建のための力強い政策の提示、人材の育成、保守政党としての明確な理念の構築が求められる。なにより分散した保守勢力の再結集に真剣に取り組むべきで、その際、解党的な覚悟を示すことが肝腎である。1人区での善戦に浮かれている場合ではない。
いずれにせよ、昨年の「政権交代」の意味について、今一度有権者が真剣に検討し直すべき局面になって来た。早期の解散・総選挙が求められる。(了)
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第46回:事実上の政権不信任(遠藤浩一)