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百地章

【第744回・特別版】来年の通常国会こそ改憲の正念場だ

百地章 / 2020.12.07 (月)


国基研理事・国士舘大学特任教授 百地章

 

 臨時国会が12月5日閉幕し、憲法改正手続きを定めた国民投票法の改正は、最大の懸案事項の一つだったにもかかわらず、今回も先送りされてしまった。

 ●国民投票法の改正もできない自民
 衆議院では何とか憲法審査会を開会し、自由討議にまでこぎ付けたものの、結局、国民投票法の改正を行うことはできなかった。この改正法案は公職選挙法の改正に合わせて投票所の拡大等を定めるだけであり、すでに与野党で合意が成立している。にもかかわらず、平成30年に提出されて以来、8国会も棚ざらしにされたことになる。
 11月26日の会議では、閉会直前に日本維新の会の馬場伸幸委員から「討議終了と採決」の緊急動議が提案されたが、それも叶わなかった。国民民主党も法案に賛成しており、折角、恰好のお膳立てをして貰いながら、自民党が採決に踏み切れなかったのは、実に不甲斐ない。
 他方、参議院の憲法審査会では実質的な審議は一度も行われていない。そのため、日本維新の会の松沢成文委員が「3年近く実質的な審議が行われていないのは、林芳正会長(自民)の指導力、決断力の欠如によるもの」として不信任動議を提出した。残念ながら否決されてしまったが、林会長にやる気がないなら、速やかに更迭すべきだ。

 ●言い訳は聞き飽きた
 前身の憲法調査会と異なり、憲法審査会には憲法改正原案の提出という重大な責務がある。だからこそ衆参両院の憲法審査会規程には「議事は、出席議員の過半数でこれを決する」と明記されている。また、委員の数も各会派の所属議員の比率により割り当てられている。
 であれば、国民投票法改正について与野党合意はすでに成立しているから、後は採決を待つだけだ。ところが、自民党は採決できない理由をいろいろ挙げて、言い訳に終始してきた。
 曰く、もし「強行採決」を行えば、他の重要法案の審議が全てストップしてしまうと。つまり、他の法案を人質にとられているため、採決に踏み切れないというわけである。しかし、憲法改正を党是とする自民党にとって、国民投票法の改正よりも優先度の高い法案がどれだけあるというのか。毎回同じような言い訳を聞かされると、このように言いたくなる。
 改正できないもう一つの理由は、「与野党の合意」がないということのようだ。もちろん、合意できればそれに越したことはない。しかし、審査会の開催そのものに反対する共産党や、共産党の顔色ばかり窺う立憲民主党との合意など望むべくもない。自民党はいつまで幻想を追い続けるつもりか。
 第三の言い訳は、「強行採決」を行った場合、国民の猛反発を受け、憲法改正が国民投票で否決される恐れがある、ということだろう。しかし、審査会規程に従って粛々と採決するのがなぜ「強行採決」になるのか。それに、今問われているのは国民投票法の改正であって、憲法改正が国民投票に掛けられるのは先の話だ。なぜ今から恐れる必要があるのか。
 12月1日、自民、立憲民主両党の幹事長らが会談し、来年の通常国会で国民投票法改正案を採決することが事実上合意された。そうなれば、次はいよいよ改憲原案の作成だ。まさに正念場の到来であり、今度こそ自民党が真骨頂を示す時だ。(了)