公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

有元隆志

【第841回】立憲民主党に政権政党の資格なし

有元隆志 / 2021.10.18 (月)


産経新聞月刊正論発行人 有元隆志

 

 衆院選は政権選択の選挙である。単独で衆院定数(465)の過半数(233人)に達する候補者を出している自民党と立憲民主党の公約を比較したい。結論から言うと、日本共産党と多くの選挙区で候補者を一本化して政権獲得を目指す立憲民主党には、政権を担う資格はない。外交・安全保障政策を見ても明白である。

 ●「普天間県外移設」の教訓
 立憲民主党の「政権政策2021」は「平和を守るための現実的外交」とのタイトルで、「日米同盟を基軸とした現実的な外交・安全保障政策を推進します」とした。何をもって「現実的」という言葉を使ったのか。立憲民主党の前身である旧民主党の鳩山由紀夫元首相は平成21(2009)年の総選挙で、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に関して「最低でも県外」との「非現実的」な政策を打ち出し、政権獲得後に「学べば学ぶほど米海兵隊の抑止力が分かった」との有名なセリフを残し、県内移設に転換し批判を浴びた。
 その教訓から学び、「現実的」な政策を打ち出したのかと思ったら、普天間移設問題では「(名護市)辺野古新基地を中止し、沖縄における基地のあり方を見直すための交渉を開始します」と明記した。普天間飛行場の「無条件撤去」を主張する共産党に配慮したのかもしれないが、鳩山政権の失敗から何も学んでいない。
 立憲民主党の泉健太政調会長は13日放送のBSフジ番組で、「我々はまず一旦工事を中止すると言っている。そして米国と協議する。基地建設を断念すると宣言しているわけではない」と語った。まったく説得力がない。普天間返還合意の原点は、住宅密集地で万が一事故が発生すると人命を失う恐れがあるため早期に危険性を除去することにあったはずだ。
 立憲民主党は「専守防衛に徹しつつ」との前提で「領土・領海・領空を守ります」と主張した。ロシア、中国だけでなく北朝鮮のミサイル技術が飛躍的に向上しているなかで、今のまま「専守防衛に徹し」ていては、国は守れず抑止力も維持できない。ここも日米安全保障条約の破棄を主張する共産党に配慮したかのような表現と言える。

 ●防衛費1%のくびきからの脱却を
 自民党は「わが国自身の防衛力強化等を通じて、日米同盟の抑止力・対処力を強化します」と書いている。これこそが立憲民主党が言う「現実的」な政策ではないか。
 自民党は「NATO(北大西洋条約機構)諸国の国防予算の対GDP(国内総生産)比目標(2%以上)も念頭に、防衛関係費の増額を目指します」とした。これまでの対GDP比1%以内のように金額ありきではなく、日本の防衛のためにはどのような態勢をとるのが適切なのかを、「国家安全保障戦略」の改訂と、それと並行して進める防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の見直しの中で議論し、実現を図るべきだ。(了)