公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

今週の直言

荒木信子

【第948回】日本は韓国に通すべき筋は通せ

荒木信子 / 2022.07.25 (月)


国基研企画委員・韓国研究者 荒木信子

 

 韓国は政権交代をしたが、日韓関係の今後はどうなるだろうか。この70年余りを振り返ることで考えてみたい。
 日韓関係において歴史認識問題が登場したのは1980年代であり、決定的に比重を増したのは慰安婦問題が浮上した1990年代からである。
 認識の問題であるから妥協点を見つけるのは難しいが、ますます問題が複雑になる理由は、韓国が情緒的な主張を展開し、日韓の合意事項を反故ほごにするからである。慰安婦問題も朝鮮人戦時労働者問題も、韓国は手を替え品を替え、蒸し返してくる。

 ●70年以上変わらぬ主張
 もっと遡ってみよう。私は1945年8月15日から1950年6月25日、つまり日本の敗戦の日から朝鮮戦争勃発までの南朝鮮・韓国の新聞に目を通してきた。すると、驚くほど現在とよく似た言説や出来事が登場するのを知った。
 例えば、徴用された人たち(国民徴用令に基づく「徴用」なのかは不明)が補償せよと声を上げたという記事が載ったり、あるいは「強制徴用」(無理矢理だったことを強調している)という見出しが使われたりしている。
 終戦間もなくのことであるから、混乱の中、致し方ない面があったのかもしれないが、朝鮮半島から引き揚げてきた日本人に関する本(日本で書かれたもの)を読むと、日本の企業や役所を取り囲んで大騒ぎが起こされたことがあった(目的を持った団体が介入していた可能性は排除できない)。
 そうしたもろもろの利害関係を整理して、紆余曲折の末、合意に至ったのが1965年の国交正常化ではなかったのか。
 また、特に韓国建国前の新聞には海外から帰国した活動家について多くの記事があるが、これら活動家は戦時中にソ連、中国(国民党、共産党の双方)、米国などと通じて、反日活動を繰り広げていた。これを見ると、今日、慰安婦を象徴する少女像が韓国以外の欧米の地にも建てられる訳が分かるように思える。
 それに対し日本側が反論すれば「妄言」と非難され、結局は譲歩させられる。そんなパターンを繰り返してきた。

 ●一時の軟化に惑わされるな
 韓国の日本に対する態度は、以上のように長期間にわたり同じような様相を見せている。どのような形で表に出るかは、国際情勢の変化を反映した両国関係の在り方と関わっている。左派の文在寅前政権から保守の尹錫悦政権へ交代したからといって、日本への態度が一夜にして様変わりすることは期待できない。
 尹政権は最近、日本に朴振外相を派遣し、前政権が決着済みの朝鮮人戦時労働者問題を蒸し返したため極度に悪化した日韓関係を修復したいとの意向をにじませた。しかし、日本としては、歴史の真実や過去の協定や合意を踏まえ、韓国の一時的な変化に惑わされず、筋を通すべきところは通してほしいと願うものである。(了)
 
 

関 連
国基研チャンネル

第182回 尹錫悦政権が、政権維持のため日本に譲歩を求める可能性

韓国の朴振外相が来日。日韓関係改善のため共に努力しようという。だが、関係を悪化させた原因は韓国側にある。支持率低下の尹錫悦政権が、政権維持のため日本に譲歩を求める可能性あり。それでも日本は歴史的事実と国際法に基づき最後まで筋を通すべし。