公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

有元隆志

【第969回】ロシアの日本領事拘束に対抗措置を

有元隆志 / 2022.10.03 (月)


国基研企画委員・月刊「正論」発行人 有元隆志

 

 外交官の身柄を拘束し、取り調べることは国家主権に対する重大な侵害行為である。それをロシアは平気で行った。9月26日、ロシア政府は在ウラジオストク日本総領事館の領事が国家機密に関わる情報を不正に取得したとして、この領事を拘束し、国外退去処分にした。1956年の日ソ国交回復後、ソ連時代を含めロシアから日本人外交官が「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)の宣告を受けたのは初めてだ。

 ●露外交官を追放せよ
 ロシアのプーチン大統領は9月21日の演説で「西側の目的はロシアを弱体化させ、分裂させ、最終的に破壊することにある」と述べ、主敵がウクライナを支援する米国とその同盟諸国であるとの認識を示した。日本はその一員であり、今回の摘発も揺さぶりの一環であろう。
 林芳正外相は27日の臨時記者会見でロシア側に強く抗議するとともに、「相応の措置を講じる」と述べたが、1週間たっても何の動きもない。ロシアに対抗して、日本に駐在しスパイ行為をしているロシア外交官を追放すべきだ。直ちに毅然たる決意を示さなければならない。

 ●3独裁国に囲まれる日本
 同時に、我々は日露関係が近年になく緊張状態にあることを自覚すべきだろう。安倍晋三元首相が生前述べたように、「我が国はロシア、中国、北朝鮮に囲まれ、世界で最も厳しい安全保障環境にある」。
 安倍元首相は在任中、プーチン大統領と27回会談するなど対露外交に力を入れた。その背景には、北方領土の元島民が高齢化し、領土問題解決へ時間が限られているとの思いがあった。加えて、ロシアと中国双方の軍用機接近に緊急発進(スクランブル)をかけている国は、世界中見渡しても日本しかない。北方領土問題を解決するとともに、日本にとって主たる脅威は中国であるとの認識の下、中露間にくさびを打ち込むことを安倍元首相は狙った。
 日露関係打開の期待はロシアのウクライナ侵略によって打ち砕かれた。安倍元首相は軍事力の不均衡が侵略を誘引することを教訓とすべきだと力説していた。これを安倍元首相の「遺言」と受け止め、日本政府は早急な軍事力強化に努めるべきだ。(了)