尖閣諸島は、中国による領土侵略の危機にあり、海上保安庁の徹底した警備下に置かれている。しかし、無人島であり、日本政府は国家公務員以外の上陸を認めず、管理行動と言えば、魚釣島灯台の保守点検程度である。これでは、世界の国々が日本の施政下にあると認識することは難しいだろう。
米国は、日米安全保障条約の防衛義務が尖閣諸島に及ぶと明言しているが、あくまで同諸島が施政下にあることが前提である。日本は早急に同諸島の実効支配体制を強化することが必要である。
政府が動かない状況下において、尖閣諸島を行政区域内に持つ沖縄県石垣市は、中国海警局の行動に危機感を持ち、石垣市海洋基本計画に沿い、尖閣海域の海洋管理に乗り出している。1月30日早朝、石垣市は昨年に続き尖閣諸島周辺海域の海洋調査を実施した。政府により上陸が認められないため、海洋環境の保全、漁場管理を行って、尖閣諸島が日本の施政下にあることを内外に示す狙いもある。
●日本の施政下にあることを示す海洋調査
中国は、昨年1年間で336日、尖閣海域に警備船(海警船)を侵入させ、日本の領海内で操業する漁船に接近するなどの行為を繰り返した。その様子をメディアに流し、あたかも尖閣が中国の管理下にあるかのような宣伝を行っている。
また、実力行使も進んでいる。中国海警法により準軍隊となった中国海警局は、実際に軍艦並みの装備である76ミリ速射砲を搭載した警備船を40隻ほど保有し、その一部は日本の領海内にまで侵入している。
今回の調査では、国連が選んだ「持続可能な開発目標」(SDGs)の14番目「海の豊かさを守ろう」を実践し、海洋の基礎データ取得、漁業資源の状況や島の植生等の調査を行った。また、ドローンを用いて魚釣島の南斜面を詳細に撮影した。その結果、ヤギの食害の影響と思われる植物減少が見られ、さらに水が枯れ、山の斜面が崩落している様子が確認された。現状を放置すると島から植物が消失し、生態系が崩壊する危険性を感じる。早急に魚釣島に上陸し、生態系を詳細に調査することが必要である。
●自衛隊と海保の協力不可欠
今回の調査に当たっては、海上保安庁が早い段階から厳戒態勢に入ってくれた。30日、中国国営テレビの中央電視台は、尖閣諸島周辺の海域から日本の船舶5隻を追い払ったとの海警局報道官のコメントを報じたが、実際には中国海警船は調査団に近付くこともなかった。この日、領海内に4隻、接続水域周辺に2隻の海警船が侵入していたが、海保は海警船の行動を制約し、監視下に置いていたのだ。海保と中国海警局の警備技術は、海保の方が明らかに優越している。
しかし、海警局の重武装化は進んでおり、今後、海上保安庁では対応不能となることが考えられる。併せて、台湾有事に備えた住民保護も視野に入れなければならない。そのため、昨年末に閣議決定された安保3文書に従い、自衛隊と海上保安庁の特性に合わせた役割分担による協力が不可欠である。(了)