公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

工藤豪

【第1050回】「異次元の少子化対策」効果は期待薄

工藤豪 / 2023.06.26 (月)


国基研企画委員・日本大学文理学部非常勤講師 工藤豪

 

 6月16日、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針) 2023が閣議決定され、「こども未来戦略方針」に基づき、次元の異なる少子化対策として、少子化対策・こども政策の抜本強化を推進することが明確に打ち出された。

 ●見込めない出生数の回復
 「こども未来戦略方針」の概要をみると、肯定的に評価すべき点も指摘できる。児童手当について所得制限を撤廃し、支給期間を高校生まで延長するとともに、第3子以降を月額3万円とする拡充案が示された。所得制限を付けることにより、その分の財源を経済的弱者への支援に活用すべきだとの考え方もあるが、高所得世帯の出生意欲を減退させないためにも、所得制限を付けないという判断をすべきである。また、高校生までの延長については、16歳以上が対象の扶養控除との関係をどう整理するかが課題となろう。
 そして、長年にわたり多方面から提言されてきた多子加算について、今回ようやく踏み込んだことは素直に評価したい。ただ、第3子以降3万円というのは若い世代の心に響くのであろうか。例えば5万円を実現して、高校卒業までの約18年間に総額1000万円支給というインパクトが必要ではないか。
 しかし、仮に、財源を確保して「こども未来戦略方針」に示された多様な施策が実施されたとして、出生数の回復や合計特殊出生率の低下に歯止めをかけることが実現するとは考えにくい。なぜなら、ここで示されている多くの施策が、次元の異なる少子化対策ではなく、これまで積み重ねられてきた少子化対策のベースに上乗せするメニューが並べられているからである。
 子育て環境の整備や育児休業制度の拡充などの両立支援が重要であることは言うまでもない。しかし、わが国は「子育て」と「働き方」を軸とする少子化対策を30年近く実施しながら、出生数は激減し、合計特殊出生率の低下に歯止めが全くかかっていない。さらに、高福祉・ジェンダー平等施策の充実している北欧諸国において、近年に合計特殊出生率が激減していることを鑑みると、少子化対策の方向性について冷静に自省すべきではないだろうか。

 ●必要な「出会い」支援
 「こども未来戦略方針」では、若い世代が結婚・子育ての将来展望を描けない状況に対し、「若い世代の所得を増やすこと」を最重要課題に掲げている。その取り組みは必要不可欠であるが、それだけで未婚化を改善することは難しい。独身にとどまっている理由として最も多いのは「適当な相手にまだ巡り会わないから」であり、「異性とうまくつき合えないから」という理由も急増している。
 子育てと仕事の両立に関する問題は社会的関心も高く、逼迫した状況に置かれている人の声は切実な叫びとして届きやすい。しかし、出会い・交際に関する問題は個人的な領域として認識する人も少なくない中、それに悩む人の声は届きにくい。少子化を是正するという強い意思を持つのであれば、出会い・交際に困難を抱える若い世代の声に耳を傾けることが求められているのではないだろうか。(了)