日本が国連に拠出する分担金の比率は米国と中国に次いで3番目に多い。ロシアは10位以内にも入っていない。にもかかわらず、安全保障理事会常任理事国の一員であるロシアによるウクライナ侵略もあり、国連は全く機能していない。
岸田文雄首相は19日の国連一般討論演説で、ロシアが「国際法、『法の支配』を蹂躙している」と批判したが、それだけで十分だったのか。岸田首相が「核兵器国を具体的な核軍縮措置に巻き込むことが重要」「協調のための国連を実現しよう」と訴えても、現実世界を見ると、響いてくるものがない。
●拒否権の撤廃主張を
首相は、ロシアや中国による拒否権行使で安保理が機能不全に陥っている現状を念頭に「拒否権の行使抑制の取り組みは、安保理の強化、信頼回復につながる」と述べた。「常任・非常任理事国双方の拡大が必要」とも主張した。
そこまで言うなら、常任理事国に拒否権行使を認めず、常任・非常任理事国の枠組みを撤廃し、グローバルサウスも含め議席を拡大するなど、世界の現実をより反映させるような具体的な国連安保理の改革を主張すべきだった。
唯一の同盟国、米国も常任理事国であり、安保理改革は容易ではないのは百も承知である。それでも、軍事力を背景に国家利益を追求しようとするパワーポリティクス時代が再び到来しているなか、2025年の国連創設80周年に向けて、これまでの惰性ではなく、抜本的に国連を改革するようイニシアチブを発揮するのが日本の役割ではないのか。
●何のための30億円拠出か
岸田首相は「核軍縮『主流化』の流れを改めて確実に進めていくため」として、30億円を拠出して、海外の研究機関・シンクタンクに「核兵器のない世界に向けたジャパン・チェア」を設置すると表明した。
何の意味があるのか。ウクライナをみても、首相が言うような核兵器国と非核兵器国の議論は促進されることはない。平和は話し合いから生まれるという幻想を首相は捨てるべきだろう。むしろ、日本に問われるのは核兵器を使うとの威嚇に屈しない抑止力の強化である。
理想を語るだけの「パシフィズム(平和主義)」から脱却し、自由と民主主義、法の支配を守るための砦となるという決意の表明こそ、いまの日本に求められている。(了)