自民党の若手議員グループ「責任ある積極財政を推進する議員連盟」は近く、時限付きでの消費税減税を提案する。岸田文雄首相は実現に向け指導力を発揮すべきだ。
1997年以降、3回の消費税増税こそは四半世紀以上もの間の慢性デフレをもたらしてきた元凶である。平成バブル崩壊不況の余波でデフレ圧力が高まった中、橋本龍太郎政権は1997年4月に消費税増税、歳出削減、社会保険料引き上げを実行し、慢性デフレを招いた。2012年12月発足の第2次安倍晋三政権はアベノミクスによって景気拡大が始まって間もない2014年4月、そして需要が落ち込み始めた2019年10月にそれぞれ消費税増税に踏み切った。2022年度消費税収は2013年度比で12.2兆円増えたが、その分だけ家計を圧迫する。
デフレから脱出するまでは消費税率を5%まで下げる上記の議員グループ案は理に適う。
●デフレ脱出の切り札
財政出動の重要性を見せつけたのは、皮肉にも新型コロナウイルス禍である。故安倍首相は国民一人当たり一律10万円の支給、中小・零細企業への補助などに踏み切り、次の菅義偉首相も同調した。おかげで多くの雇用が維持され、家計が被る打撃は軽く済んだ。昨年末から今年初めにかけ、コロナ禍が落ち着くにつれて、家計の心理は好転し、消費が回復軌道に乗り、企業も設備投資や賃上げに前向きになった。
昨年のウクライナ戦争勃発後のエネルギー高と円安進行を背景に、消費者物価の上昇が目立つが、企業は売上高、収益の増加を見て、今春闘では4%近い賃上げに踏み切った。それでも賃金上昇は物価の上昇に追いついていない。家計は圧迫されるのでデフレ圧力は去らないことになる。
消費税収を筆頭に政府の一般会計税収増は顕著である。2022年度の一般会計税収合計は新型コロナ禍前の2019年度に比べ12.7兆円増だが、増えた税収分だけ民間の有効需要(カネの裏付けのある需要)を政府が奪うことになる。この間の国内総生産(GDP)増加額は5.9兆円に過ぎず、税収増の半分以下にとどまったのも消費税増税のマイナス効果による。日本経済がデフレから脱出するためには、政府が物価上昇率並み以上の賃上げを企業に期待するだけでは不十分で、減税、とりわけ消費税減税がカギになる。
●財務省の反対を乗り越えよ
近い将来の消費税増税のシナリオを描いている財務省はたとえ時限付き減税でも激しく反対しそうだ。しかし、国民経済運営に最終的な責任を負うのは財務官僚ではない。主に国会議員で構成される内閣なのだ。(了)